一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会 学生部

「CSRとマーケティング」講座 第1回

-法政大学大学院「CSRとマーケティング」講座 第1回-

 

2018年6月~7月、法政大学大学院の「CSRとマーケティング」講座(毎週月曜 18 :35~22:00、担当 : 担当:茂木 信太郎先生、法政大学非常勤講師/ ソーシャルプロダクツ普及推進協会副会長/亜細大学経営学部教授)では、ソーシャルプロダクツ・アワード(SPA)の受賞者をゲスト講師に招いて、受賞商品の開発経緯やマーケティング上の工夫、市場の反響や課題などについての話を聞く機会を設けました。本特集では、その内容について簡単にご紹介していきます。※講座についての詳細:https://goo.gl/1ZxbvF

 

第1回は、冒頭にAPSP専務理事の中間が「ソーシャルプロダクツ」について話した後、エシカルジュエリーの「EARTHRISE」様と竹紙を作られている「中越パルプ工業」様に、具体的な取り組みをお話し頂きました。

 

タイトル:「ソーシャルプロダクツとその普及について」

     講演者 :ソーシャルプロダクツ普及推進協会APSP) 専務理事:中間 大維

 

ソーシャルプロダクツとは、人や地球に優しい商品の総称です。生活者のみならず、生産者や流通過程、地球環境などにも配慮があるのがその特徴です。代表的なものとしては、オーガニック商品やフェアトレード商品などがあります。ソーシャルプロダクツが現在、注目されているのは、SDGs(持続可能な開発目標)の採択や東京オリンピックの開催、生活者の社会的意識の高まりなどからです。

 

今後、ソーシャルプロダクツを展開する上で、意識すべきポイントは以下の3点です。

1点目は、川上(原材料)から川下(最終商品)までの一貫した社会的な取り組みです。生活者がより多くの情報を得られるようになる中で、川下だけの取り組み(例えば、売上の一部を寄付するだけ)は十分でなく、サプライチェーン全体での取り組みがなければリスクにもつながりかねません。APSPが2017年度に実施した調査においては「商品に倫理的な問題があると知った場合、生活者の4人に1人が商品の購入をやめる」ことが明らかになっています。

2点目は、複合的な社会的取り組みです。社会問題の多くは、単独で存在しているわけではなく、複雑に絡みあっています(例:途上国の生産者から不当な調達をすることが、農薬による健康・生態系への被害、森林伐採、児童労働などを引き起こす)。取り組みを表層的なものから本質的なものに変えようとすれば、必然的に複数の社会問題に取り組むことが求められます。

3点目は、適切な価値コミュニケーションです。社会的な取り組みだからこっそり行うという時代ではありません。生活者は適切な商品選択のために、社会的な取り組みについても適切な発信を求めています。また、適切な発信という事に関して言うと、ソーシャルプロダクツを購入する生活者であっても、その多くは、自分にとっての価値(機能性、デザイン性など)を、社会的な価値よりも重視することがら明らかになっています。よって、どのような順番や強さで商品性、社会性をコミュニケーションしていくかなども考えなくてはなりません。

 

タイトル:「EARTHRISEEthicalSustainable Fine Jewelry

   講演者 :株式会社ERTHRISE 代表取締役兼デザイナー 小幡 星子氏

 受賞商品:「月桂樹コレクション」(SPA2016 生活者審査員賞)

 

「EARTHRISE」は、エシカルジュエリーの制作・販売に取り組む企業です。ジュエリー業界は、流通経路が極めて見えづらく、その中では、様々な社会問題が発生しています。例えば、金鉱山から金を取り出す際に、最も安価で簡単な方法として、有毒な水銀が乱用されており、その量は年間最大8900トン(致死量にして約1億人分に匹敵)にも及びます。そのような社会問題と向き合い、見た目だけではなく背後にあるストーリーまで含めて美しいジュエリーをお届けすることを目指しています。そのため「EARTHRISE」では、主な素材(ゴールド、ダイヤモンドなど)は国際的な認証を取得しており、生産者(地)が見える商品づくりを徹底しています。

 

また、現在、安価な中国製ジュエリーが氾濫している影響で、日本の宝飾加工職人たちの貴重な熟練技術は消滅の危機に瀕しています。アワードを受賞した「月桂樹」は、生産者(地)や地球環境に配慮した原材料の調達のみならず、そういった伝統的な技術を大切にしている国内の職人に適正な賃金を払って制作を依頼しており、国内版フェアトレードを実践しているとも言えます。

 

すなわち、「EARTHRISE」は国内外においてフェアな取引を徹底し、それらを高い商品性や共感できるストーリーへと昇華させ、生活者にお届けしているのです。

 

タイトル:「紙だからこそできること」

   講演者 :中越パルプ工業株式会社 営業管理本部 営業企画部部長 西村 修氏

 受賞商品:「竹紙ノート」(SPA2013 ソーシャルプロダクツ賞)

 

「中越パルプ工業」は、業界で唯一、国産の竹紙を生産している製紙会社です。現在、竹は用途が少なく放置されていることで社会問題化しています。そのような竹を上質な紙に仕上げることで、森林・生態系保全、竹の購入による地域経済の活性化に貢献しています。

 

竹紙は通常の紙よりも生産コストが高く、なかなか顧客(紙の卸会社等)から受け入れてもらえていませんが、エンドユーザーである生活者に竹紙のもつ社会的な価値を訴求し、自社のプレゼンスを高めていくために、アワードを受賞した竹紙ノートやパンダとタケノコを折れる竹紙の折り紙なども展開しています。また、竹から容易に連想されるパンダを題材に、子供たちに生物多様性の大切さを訴える折り紙ワークショップを開催したり、三越とのコラボレーションで、来店者が竹紙の短冊に願いを込めて店頭に飾り付ける七夕イベントも開催しました。

 

色々な課題はありますが、「中越パルプ工業」は、斜陽産業である製紙業界の中で差別化を図り、社会から認められる企業となるため、自社のみが生産している竹紙と社会問題化する竹とを結びつけ、ブランドを向上させる大きな挑戦を行っているのです。

 

 

(文責 ソーシャルプロダクツ普及推進協会 学生部代表 樋口晃太)