一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会 学生部

「CSRとマーケティング」講座 第3回

-法政大学大学院「CSR とマーケティング」講座 第 3 回-

株式会社ワイス・ワイス 佐藤岳利 様、特定非営利活動法人パルシック 井上礼子 様

 

今年の6月~7月、法政大学大学院の「CSRとマーケティング」の講座(毎週月曜 18 :35~22:00、担当 : 担当:茂木 信太郎先生、法政大学非常勤講師/ ソーシャルプロダクツ普及推進協会副会長/亜細大学経営学部教授)では、ソーシャルプロダクツ・ア ワード(SPA)の受賞者をゲスト講師に招いて、受賞商品の開発経緯やマーケティング上の工夫、市場の反響や 課題などについての話を聞く機会を設けました。本特集では、その内容について簡単にご紹介していきます。 ※講座についての詳細:https://goo.gl/1ZxbvF

第 3 回は、国産のフェアウッド(伐採地の森林環境や地域社会に配慮した木材)で家具を製造している「ワイス・ ワイス」様と、フェアトレードの紅茶やコーヒーなどを販売している「パルシック」様に具体的な取り組みをお話し頂きました。

 

【タイトル】 国産木材によるソーシャルビジネス ~エシカルファーニチャー市場を日本につくる~

【 講演者 】 株式会社ワイス・ワイス 代表取締役社長 佐藤 岳利 様

【受賞商品】 KURIKOMA 復興スギエコファニチャー (SPA2015 特別賞「復興」)

 

ワイス・ワイスは、創業当初は単なるオシャレな家具メーカーを目指していました(社会的な取り組みに力をいれてはいませんでした)。しかし、2000 年代 にファストファーニチャー(途上国の環境破壊をいとわずに森林伐採しながら 木材を調達し、格安で販売される家具)が市場を席巻し、家具業界は際限の ない価格競争へと突入していきます。その一方で、国内の森林は増え続けており、国産木材が行き場を失っていることに目をつけ、2009 年頃からは国産 のフェアウッドを活用し、生産地域の経済(林業従事者、家具職人など)に貢 献できるような家具作りを、事業の中心に据えています。「KURIKOMA 復興 スギエコファニチャー」は、東日本大震災の被災地の杉を活用しており、 当該地域における家具の産業形成に貢献した商品です。

 

ワイス・ワイスは、価格の安さ以外の多様な価値観を顧客に伝えながら、事業を展開しています。具体的には、素材や商品の品質やデザイン性のみならず、社会的な価値観(生産者とのつながり、地域・環境への貢献など)も大切にしています。社会的な価値観を伝えるためには、顧客がより身近に感じやすい伝え方をする必要があり ます。例えば、認証制度(FSC など)は重要な仕組みですが、それだけを訴求しても顧客はピンときません。ワイス・ワイスでは、がんばる生産者や地方の林業の姿を伝え、共感してもらえるような価値コミュニケーションを心掛けています。事業性という観点についても、ワイス・ワイスの利益率は、社会的な取り組みを始める以前と比べて、向上しました。

 

社会問題を解決し、社会的な価値観を拡大していくためには、多様な人々・組織が協力することが必要です。よって、ワイス・ワイスでは「仲間をつくり、より良い関係性を育む」ことを大切にしています。国産フェアウッドの活用・地域経済への貢献などに力を入れるようになってから、全国各地の林業従事者やフェアウッドを推進してい る異業種の他社、学生などの様々なつながりが増えました。ワイス・ワイスでは、そのキッカケになり得る場づくり(フェアウッド研究会 詳細:http://wisewise.com/event/fairewood/)にも取り組んでいます。

 

【タイトル】アールグレイ紅茶を商品化するまで ~商品開発の経緯、コンセプト、市場の反響~

【 講演者 】特定非営利活動法人 パルシック 代表理事 井上 礼子 様

【受賞商品】 アールグレイ紅茶 (SPA2014 特別賞「仕組み」)

 

パルシックは、アジアで「人と人が助け合い、支えあう、人間的で対等な関 係を築く」ことをミッションに活動している NGO です。アジア地域の人々をビジネスで自立させ、市場(消費者)につなげるサポートをするのが、パルシッ クにおける支援の考え方であることから、フェアトレード商品の販売も手掛け ています。「アールグレイ紅茶」は、農薬による健康被害に悩まされていたスリランカの小規模農家たちと一緒に作ったオーガニック×フェアトレー ドの紅茶です。

 

「アールグレイ紅茶」は、以下の 3 つを重視しながら開発しました。1 つ目は、おいしさです。当然のことながら、(オーガニックやフェアトレードといった社会的な価値観に共感してもらえたとしても)美味しさで他の商品に劣れ ば、消費者からの支持を得ることはできません。美味しさをとことん追求するべく、良質なオーガニックベルガモットオイル(茶葉に香りづけをするための精油)の調達と配合、茶葉のサイズ、(ターゲット市場である)日本の水でのテイスティングなどに、こだわり抜きました。2つ目は、パッケージデザインです。これも当然ではありますが、 まず消費者に手に取ってもらえないことには、購入につながることはありません。思わず手に取りたくなるような パッケージデザインを目指しました。3つ目は、価格設定です。(販売者である)自分たちが購入できないような高価格では、なかなか商品が拡大しませんが、大手メーカーの商品と同等の価格では利益を確保できません。したがって、無理のない範囲で購入できるものの、スーパーに並んでいる商品よりは高価格というバランスの取れた値段を設定しました(ティーパック25袋入り756 円)。

 

2016 年、「アールグレイ紅茶」にパッケージ不備(紅茶自体に影響はなかったものの、スリランカからの輸送中に パッケージが一部開いてしまったというトラブル)が発生しました。パルシックはこのトラブルに誠実に向き合い、パッケージ不備を公表した上で、半額にて(パルシックは赤字=生産にかかる費用のみを賄える額)同商品を販 売しました。結果的に、この対応が多くの消費者にとって「アールグレイ紅茶」を試す機会となり、その後、売上は増加しました(※現在は、パッケージが改良されています)。消費者からの信頼を損ないかねない不祥事であっても、誠実に対応することが大切です。時には、それが逆境を好機に変えてしまうことさえあるのです。

 

(文責 ソーシャルプロダクツ普及推進協会 学生部代表 樋口晃太)