一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会 学生部

持続可能な企業経営に関する分析

論文タイトル

持続可能な企業経営に関する分析(学士論文)

 

著者

樋口晃太、石室真由佳、木村めぐみ、宮崎美桜、滝口紗弓、瀬戸詩織(中央大学 商学部 日高ゼミ2017年度卒)

 

要旨

サスティナビリティ(持続可能性)が、あらゆる分野において共通のキーワードになってから久しい。特に、企業経営においては、持続可能性に新たな競争優位の源泉を求める動きが強まっている。1997 年にマッキンゼー賞を受賞したスチュアート L. ハートの「『持続可能性』を実現する戦略」は、持続可能な企業経営の原点となった論文として、未だに多くの企業家や研究者の間でバイブルとなっている。この事実が、なによりその重要性を物語っている。

 

持続可能な企業経営の分野は多岐にわたる。環境経営はもちろん、CSR 経営や社会起業家なども当然その範疇に含まれる。この分野について、21世紀に突入してから新たな潮流が生まれた。それは、CSV 経営やソーシャルビジネス、ソーシャルマーケティングなどの企業がビジネスにより社会的課題を解決することで、社会性と営利性を同時に実現しようする概念の台頭である。今後、社会性と営利性を同時に実現しようする概念の全般を指すとき、「新しい潮流」という表現をする。このような潮流が生まれた背景には、様々な要因が考えられる。例えば、地球環境問題の深刻化、BOP市場の拡大、商品やサービスのコモディティ化、消費者の価値観の変容、大量生産・消費・廃棄に集約される20世紀型ビジネスモデルへの反省などである。

 

それらの中で最も本質的で重要な要因は、先進国における「社会と市場の成熟化」であると考える。 20 世紀のグローバル経済は、良くも悪くも日米欧の三つ巴であった。しかし、今や 3 国の社会と市場はすっかり成熟化し、IT 技術の発展と相まってグローバル経済に多くの変化が起きた。国内市場が飽和すれば、当然海外市場に目が向く。企業活動が急速にグローバル化する中、発達した IT 技術は、途上国の社会的課題を鮮明に映し出した。また、社会の成熟が進むと、人々の価値観も変容していく。社会や経済が豊かになることで、五段階欲求説における自己実現や評価のステージに到達すると、人々は自分にとって良いモノを求めることだけにとどまらず、他人や社会にとっても良いモノを求めるようになっていくのである。

 

このような社会においては、「今後、持続可能な企業経営の『新しい潮流』が求められるのだろうか」、 そして「『新しい潮流』は資本主義社会において通用し、企業が現実的に実践していくことが可能なのだろうか」、本稿は、この 2 点について分析することを主目的とする。

 

分析に際しては、2つのアプローチをとる。1つ目は、学説整理である。持続可能な企業経営の分野の中でも、今や国内外や企業の規模を問わず、無視することが出来ない概念となっている CSR(企業の社会的責任)の系譜を整理した上で、「新しい潮流」の代表格である「CSV(共通価値の戦略)」、「ソーシャルビジネス」、「ソーシャルマーケティング」の学説を分析していく。 2つ目は、実社会における「サスティナビリティ(持続可能性)」の浸透度を、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、中国を比較することにより分析する。仮に、「新しい潮流」が21世紀の企業経営にふさわしい革新的な概念であったとしても、社会や消費者にそれらを受容する土壌がなければ、企業経営として実践していくことなど不可能である。また、実社会が持続可能な発展を遂げる上で、企業経営に何を要求しているのか検討するのは、極めて意義があることだと思われる。2つの視点からアプローチすることにより、厚みのある分析を実現する。そして最後に、持続可能な企業経営の分野において、今後議論を深める必要性が高いテーマや仮説についてまとめる。