APSP第22回定例セミナー

2019/08/20

APSP第22回定例セミナー

モノがあふれている現代。そのような世の中で、選ばれる商品になるためには、商品そのものの価値だけでなく、「共感」してもらえる「ストーリー」が大事になります。ソーシャルプロダクツとは、何らかの形で社会的課題の緩和・解決に貢献するもので、その商品を応援したくなるような、共感できるようなストーリーをもつ商品が多数あります。そこで今回は、ソーシャルプロダクツ・アワード2018において、カカオ原産国での児童労働問題や、国内の虐待・貧困・親の離婚などを理由とする児童養護問題など、様々な社会問題の解決に取り組み、審査員からも高い評価を得た国際部門大賞受賞企業のロータスコンセプト様に、商品開発の裏側や、どのようにそのストーリーを構築していったのか、また、価値を高めるための工夫について具体的なお話をうかがいました。

 

【タイトル】ソーシャルプロダクツ・アワード2018 大賞受賞商品に学ぶフェアトレードにおける価値創造

講演者 】株式会社ロータスコンセプト 代表取締役社長 蒲田 千佳

【大賞商品】love lotus Bean to Bar Raw チョコレート

 

この度、大賞を頂いた「love lotus Bean to Bar & Raw チョコレート」は、ベトナム産の児童労働・自動搾取が無いオーガニックのカカオ豆で作ったチョコレートです。売上の一部は、福島県の児童養護施設での木育(木の製品や森林浴などを体験してもらう中で、自然の魅力を伝え、健やかな心を育むこと)活動に寄付をしています。寄付付き商品の多くは、すでにある商品や会社の売上の一部を寄付している場合が多いですが、「love lotus」は最初から子どもたちに「希望・勇気・夢」を届けることをコンセプトに開発した商品です。

 

現在、日本では親の虐待、貧困、離婚などで苦しんでいる子供たちが沢山います。約600の施設に約3万人もの子どもたちが暮らしており、現在も増加しているそうです。弊社の寄付は、そのような児童養護施設の子どもたちが遊ぶための玩具などに充てられています(写真参照)。私自身も、幼少期に虐待を受けた経験があります。同じように苦しんでいる子供たちを救いたいという強い気持ちが、商品開発の原動力になりました。lotus(ロータス)は、日本語で蓮を意味します。蓮は、汚れた泥の中でないと美しい花を咲かせることができません。それは、人生そのもののようにも思えます。「現在、辛い思いをしている人たちを、その先にはきっと明るい幸せな人生が待っているよ!と元気づけたい。」そんな想いから、ロータスコンセプトでは、蓮をモチーフにした商品(雑貨など)を販売しています。「love lotus」の原材料にベトナム産のカカオ豆を選んだのも、ベトナムの国花が蓮であることにご縁を感じた節があります。

 

「love lotus」には、途上国の子どもたちに対する社会的な配慮もしています。途上国のカカオ豆をはじめとする生産現場において児童労働・児童搾取が横行しており、子供たちが学校にも通えず働かされていることも、深刻な社会問題です。弊社が原材料を仕入れている農場は、児童労働・児童搾取が一切行われておりません。弊社がいくら透明性の高いフェアな調達を心がけたとしても、1企業が社会に与えるインパクトは、それほど大きくないかもしれません。しかしながら、私たち企業、そして消費者の一人ひとりが、児童労働・児童搾取のある商品を買わないという行動を積み重ねていけば、明るい未来社会が到来すると信じています。そのような背景から、子供たちに「希望・勇気・夢」を届けるチョコレートの開発を目指しました。

 

商品開発にあたっては、価格以外の価値で勝負することを最初に決めました。これまで述べた商品の背景にある想いやストーリーを大切にしたいからです。とはいえ、商品自体にも際立った価値を付加しないことには、商品として成立しません。「love lotus」は、素材にも製造過程にもこだわりぬいています。弊社の契約農場は、ベトナムで唯一、カカオ豆をオーガニックで栽培しています。そのカカオ豆をBean to Bar(豆を仕入れて、粉砕・焙煎するところから、成型するまでを1つの工房で行う少量生産)で丁寧に作り上げています。

 

カカオ豆は元来、スーパーフードと呼ばれるほど栄養価が高い食材です。しかし、それらの栄養素は焙煎すると飛んでしまうため、48度以下の非焙煎で製造しています。味付けは、バターや乳化剤、香料といった余計な素材を使用せず、なるべくピュアな味を心がけました。さらに、日本ではおそらく弊社しか採用していない古代製法を取り入れています。古代製法とは、荒く挽いたカカオ豆を黒糖のみで味付けし、低温を保ちながら石臼ローラーで混ぜて固める非常に手間のかかる製法ですが、大規模な設備投資は必要なく、カカオのザクザクした食感を際立たせることができます。資金の少ない弊社が、チョコレートという競争の激しい市場に参入する上では、極めて合理的な製法でした。フレーバーには、積極的に加賀棒茶やオーガニック栽培のゆずなど、地元金沢の素材を取り入れています。また、ベトナムは、カカオ豆の生産地域の中では日本に最も近い地域です。すなわち、「love lotus」はフードマイレージ(食品の輸送距離。輸送に伴って排出される二酸化炭素の環境負荷に注目した概念)にも留意した商品といえます。

 

商品開発の道程は、順風満帆だったわけではありません。とくに、苦労したのはカカオ豆の皮をむく工程です。通常は焙煎する際、皮がむけていくのですが、非焙煎の製法を採用したため、一つひとつ手で丁寧に剥いていくしかありません。たった100グラムを剥くのに、30分以上もかかってしまいます。これを自社で行うと、他の工程が滞ってしまいます。そこで、地元の障がい者福祉施設に皮むき作業を委託しようとしましたが、営業をかけても全く取り合ってもらえませんでした。しかし、クラウドファンディングやSNSなどのインターネットを通した情報発信がキッカケで、「love lotus」のストーリーに共感いただいた地元メディアに取り上げてもらえるようになると、受託を買って出る施設が現れるようになり、皮むき作業の問題を解決することができました。

 

「love lotus」のこだわりは、チョコレートの素材や製造工程にとどまりません。パッケージにも、社会的な配慮が散りばめられています。単に、石油由来の原料をなるべく使用しないといった範疇にとどまらず、チョコレートを食べた後も小物入れなどとして利用してもらえるようなリユースの視点でパッケージを作りこみました。とくに思い切った点として挙げられるのが、チョコレートという文言を記載しなかった点です。商品名が入ってしまうと、どんなに綺麗な箱でもリユース感が否めず、人前で使用す るのが憚られるのではないかと考えたからです。上品なブックタイプの箱をレッドに染め上げ、蓮の中にハートマークをあしらったロゴとブランド名「love lotus」のみのシンプルなデザインを採用したので、リユースしてもおそらく誰もチョコレートの箱だとは思わないでしょう。

 

「love lotus」は、国内の児童養護施設の支援、フェアトレードによる調達、フードマイレージへの配慮、地元金沢における障がい者雇用の創出、オーガニック素材の積極的な使用、リユースできるパッケージといったソーシャル性と、洗練されたパッケージデザイン、他にはない唯一無二の味・食感といった商品性を両立したソーシャルプロダクツなのです。

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