ソーシャルプロダクツ・インタビュー<br>─山陽製紙株式会社「crep(クレプ)」─

2020/08/21

ソーシャルプロダクツ・インタビュー
─山陽製紙株式会社「crep(クレプ)」─

2020年7月1日から、プラスチック製レジ袋の有料化が義務付けられました。そうした脱プラスチックの風潮は、袋やストロー以外のジャンルにも広まりつつあります。例えば、アウトドアや災害時における必需品のレジャーシート。皆さん、プラ製を使っていませんか?ソーシャルプロダクツ・アワード2020を受賞した「ピクニックラグ」は、再生紙製のレジャーシートで、紙の風合いを活かした自然と調和するデザインが特徴的です。

今回は、アップサイクルブランド「crep(クレプ)」で同商品を展開する山陽製紙株式会社 企画開発部の武田知子様にお話を伺いました。

 

 

 

山陽製紙株式会社 企画開発部 武田様

 

―はじめに、「crep」とはどのようなブランドですか?

工業用クレープ紙を用いたアップサイクルブランドです。「自然を楽しむ」や「自然に親しむ」をコンセプトにしています。工業用クレープ紙は通常、電線を巻く際などに使用する紙で、丈夫で水に強く機能面で優れた素材です。第一弾商品はそれらの特性を活かして、レジャーシート「ピクニックラグ」を開発しました。弊社のクレープ紙は再生紙製なので、通常のレジャーシートと比べて、プラスチック使用量を約150分の1に抑えることができます。

ブランドの開発経緯については、社内で端材活用のコンペを開いたことが始まりです。そこから生まれた「御座シート」という商品を販売していたのですが、あまり人気がありませんでした。そこで少し切り口を変え、2016年に「おうちキャンプ」というテーマで、家で使えるキッズ用のテントなどの商品を開発し、モニター会に出品したのですが、結果は惨敗で、目前に迫った展示会に出せる商品がなくなってしまいました。しかしこのモニター会を契機にデザイナーさんに協力していただけるようになって、一旦はお蔵入りになった「御座シート」が見直され、デザインや商品名を練り直しました。改良後に改めて展示会に出品したところ好評を博し、端材では生産が間に合わなくなったので新ブランドを立てることにしました。

御座シート(写真左)・ ピクニックラグ(写真右)

 

 

―なぜアップサイクル(元の素材や製品よりも高い次元・価値のあるものを生み出すこと)ブランドが山陽製紙様で企画、開発されたのでしょうか。

単なるリサイクル商品は、どうしても商品の質が下がったというイメージがついてしまいます。ですが、再生するという行動には、いらないものを活用したいという思いがこめられています。ダウンサイクルではなく、より価値のある商品であると伝えたいと思い、アップサイクルブランドとしています。クレープ紙はもともと、包装に使用された後は捨てられていました。しかし、用途を変えることで、繰り返し使えるようになったり、色合いや質感がナチュラルで生活になじむので、ライフスタイルを「ちょっと豊かにする商品」を作ることができると思っています。実際、「アップサイクル」という商品の性質に興味を持っていただいた多くの方に購入していただいています。

 

―第一弾商品として、アウトドアアイテムであるレジャーシートに注目した理由を教えてください。

工業用クレープ紙の性質である機能面から、丈夫で水に強く、軽いクレープ紙はピクニックなどのアウトドアの場面で活躍できるのでは、と考えたからです。レジャーシートは自然と関われる商品なので、再生紙であることと相性が良いと思いました。今後も「crep」では、自然を楽しめるアウトドアアイテムを中心に展開していきたいと考えています。

 

―ファッションブランド「スポークンワーズプロジェクト」とのコラボレーション商品「DAYバッグシリーズ」について、その経緯を教えてください。

 

「crep」とファッションブランド「スポークンワーズプロジェクト」がコラボレーションした「DAYバッグシリーズ」

 

もともと、アウトドアアイテムとしてバッグやリュックの商品開発を「crep」で行っていました。その商品設計に苦戦し頓挫していたところ、ピクニックラグのデザインをお願いしたきっかけで、先方からコラボレーションの提案をいただきました。社内で試作していた時には、縫製の粗さや強度が弱くなってしまうことが課題でしたが、スポークンワーズプロジェクト様は衣料品に詳しく、スポーツ関連商材も手掛けているので、縫製会社様を紹介してくださり、またクレープ紙と合う形のカバンを考案していただくなどして実現しました。2020年6月に発売したばかりですが、展示会ではかなりのご好評をいただいています。

 

このコラボレーションを通じて、紙に対する考え方が大きく変わりました。今までは、プラスチックや布と比べると強度で劣るため、紙を利用した商品づくりに限界を感じていました。しかし、素材にあった形状や縫製、商品に対するリペアのサービスを考えたりすることで、再生紙製の商品の幅が広がっていくと気がつきました。

 

―商品のターゲットと、それをふまえた販路、プロモーションの工夫を教えてください。

発売時はおしゃれでかわいいピクニックをイメージして20代から30代の女性をターゲットにしていましたが、実際には男性やお子さんのいるご家庭にも多くご購入いただいています。また、SDGsなどの流れの中で再生紙を使用している点に注目する方が増えていて、素材感とデザインがマッチしているという評判もよくいただきます。

販路については、展示会で「crep」に注目していただいたセレクトショップや百貨店、書店様等でお取り扱いいただいています。そのほかにも、全国に店舗があるライフスタイルショップ様にも採用していただきました。弊社としては本社併設のギャラリーやオンラインショップ「紙でエコする通販サイト」とSoooooS.comで販売しています。

プロモーションは、SNSやプレスリリースが中心です。インスタグラムやフェイスブックではお客様から、プレスリリースでは雑誌やテレビ局の方からご連絡をいただくこともあります。

 

―今後の課題、展望について教えてください。

「ピクニックラグ」に関しては、使用後に古紙として再生できる仕組みを作りたいと考えています。また、ラミネート加工にプラスチックを少量使用しているので、代替できる自然由来の素材はないか模索しています。

また、「crep」商品全体の課題としては、プラスチックと比べると丈夫さや防汚性が劣ってしまうことがあげられます。長く使ってもらえるようにしたいので、修理の仕組みを作ったり、再利用の提案をしたりしていきたいと思います。

「crep」では再生紙製のクレープ紙でアップサイクルを行っているので、本来捨てられるはずだったものが何度も形を変えながら私たちの生活を支えてくれています。弊社では、ゴミを減らす、もったいないと感じる、物を大切にするということを通じて、捨てられるものを見つめなおす商品を開発していきたいです。そして、商品の性質、素材、生産背景など含めて、自然と人をつなぐきっかけになりたいと思っています。

 

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(取材を終えて)

BtoBのリサイクル製品である工業用クレープ紙から、BtoC商品であるレジャーシートやバッグへとアップサイクルしていく「crep」は非常に画期的な試みを行っています。おしゃれなデザインも目を引く同ブランドの今後の商品展開に注目です!

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山陽製紙株式会社 https://www.sanyo-paper.co.jp/

crep https://www.sanyo-paper.co.jp/crep

ピクニックラグ「crep(クレプ)」は、ソーシャルプロダクツ・アワード2020を受賞しています。

 

(記事執筆:長井颯矢)

 

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