ソーシャルプロダクツ・アワード受賞商品『Nstyle』をテーマに慶應大学の学生との座談会を実施しました!

2025/08/08

ソーシャルプロダクツ・アワード受賞商品『Nstyle』をテーマに慶應大学の学生との座談会を実施しました!

ソーシャルプロダクツ普及推進協会では、2024年度より慶應大学SFCの授業に参画し、学生とともにソーシャルプロダクツの普及を考える課題演習に取り組んでいます。 

今回は、その課題商品のひとつとなった株式会社エル・ローズの“つぶさない”バストフラットインナーブランド『Nstyle(エヌスタイル)』について、グループ演習に参加した男女4名の学生と株式会社エル・ローズの担当者とともに座談会を行いました。
なお、参加学生は学外活動として自由参加いただいた方々で、演習では主に中学生をターゲットに『Nstyle』を普及させていく取り組みを提案してくれました。

座談会では、その提案に至った参加学生の性の問題に対する意識、そして性の問題を解決するソーシャルプロダクツが学生世代に普及していくためには?というテーマで意見が交わされました。 
(以下敬称略)

まず、率直に『Nstyle』という商品の印象を聞かせていただけますか? 

Ayu:とても良い商品だと感じました。私は普段からアウターにひびきにくいシームレスな下着を選ぶようにしていたので、まさにその希望を叶えてくれる商品だなと。学生目線では少し価格的に躊躇するところもありますが、購入を検討したいと率直に思いました。 

Mari:本当に「普通の下着と変わらない」という点が良かったです。こういった種類の下着ならではの独特な質感がなく、他の下着と同じように着ることが出来ると思いました。 

Nana:以前からスポーツブラなども着用しており、バストを抑える下着は締め付けられるのが当たり前だと思っていましたが、『Nstyle』はその感じがなく、見た目と着心地のギャップにとても驚きました。バストはしっかりと補整されるにもかかわらず苦しさが全くなく、ちょっと理解が追いつかないような不思議な感覚でした。 

上山:皆さんが言ってくださったように、特殊なものを着ていると感じさせない、シンプルでジェンダーレスなデザインを意識しています。また、着用による締め付けなどの身体への負担を最小限にするため、補正下着メーカーならではのこだわりが反映された仕様になっています。 

 今回『Nstyle』の課題に取り組むにあたり、あらためてご自身の性の意識やそれに関する問題について考えたことはありましたか? 

Nana:小中高の学生時代の自分自身の体験や、性のアイデンティティの定まらなさにとても悶々としていたことを思い出しました。身体が成長していく中で、異性の友達から性的な対象として見られていることに戸惑った経験、また進学した女子高で古い価値観でのいわゆる“女性の役割”を求められるなどの経験から、性の在り方への違和感を持っていました。制服のスカートの着丈をあえて伸ばしてみるなど、女性らしさに対して自分の中での小さな抵抗のようなものを繰り返していたように思います。親との価値観のずれもあり、環境的にもあまり周囲には相談できませんでした。 

Ayu:私は高校卒業まで性の価値観について悩むことはあまりありませんでした。 
ただ、大学生になり、初めて異性とお付き合いをする経験の中で、女性であるという役割や理想像を演じてしまうことを窮屈に感じるようになり、その反動でもっと自由に自己表現をしたいと思うようになりました。現在は、男性目線を気にせずにメイクや服装を選ぶ時間を意識的にもつことで、生きやすく深呼吸ができるようになったような感覚があります。 

Mari:もともと自分のバストにコンプレックスがあり、バストや体のラインを綺麗に見せることを意識していました。可愛い下着に憧れがありましたが、親と同居していた頃はあまりとりあってもらえず、言い出せなくなってしまったこともありました。 
また、小学校時代に性の問題について違和感を持つ出来事もありました。在学していたのは比較的新しい学校でしたが、体育の授業では体育着の下に下着をつけてはならないというルールがあり、二次性徴が早かった友人(女子生徒)がとても戸惑っていたこと、また自分自身もおかしいと感じたことを覚えています。当時はうまく言語化できませんでしたが、性の問題に対して、社会の構造が邪魔しているということを最初に感じた体験でした。 

Ryo:自分は男性ですが、校則がおかしいという話は聞いたことがあります。下着の色指定があること、またそれを女性教員がチェックするというようなこともあったみたいで、当時からおかしいという話は学生の中でも出ていました。しかし、小中学時代は自我も固まっておらず記憶も曖昧な時期だからなのか、大きな問題になっていなかったようにと思います。
自分に関しては、家庭内でも性の話題は禁忌ではありませんでした。ただ今回『Nstyle』を課題商品に選んだ理由を思い返してみると、自身が感じていた問題意識があるからだと思います。 
ひとつは、高齢の祖母が自身のバストケアにほとんど意識を向けることがなかった様子をみて、女性の身体のケアや女性としての尊厳について考えさせられたことです。もうひとつは、現代において、性の多様性が社会的に肯定されておらず、抑圧されていることです。そのことに違和感があり、セクシャルマイノリティの支援団体や当事者団体にも関わっています。  

上山:学校現場での問題や違和感のある校則のお話は、様々なところでお聞きしています。ルールを作るのが大人たちであり、そこに偏りがあることが推察されるお話ですね。問題意識を持っていない大人がいまだに多いということを感じます。 

中間:皆さん、自身の様々なご経験の中で深い問題意識をお持ちですね。そして、性の問題は、やはり親御さんや身近な方と率直に共有することが難しい問題だということを改めて感じました。 

 

今回みなさんの課題発表では、学校や制服のシーンにおいて『Nstyle』を展開するというアイディアを出して頂きました。学生世代をターゲットにするという展開はどのように決まったのでしょうか? 

Ayu:自分たちがこれまで経験してきた年代の中で提案したい、という思いがありました。当初は、小学校高学年くらいの下着デビューをするタイミングをターゲットに設定ができないかという話をしていましたが、小学生同士が下着やバストについての悩みを共有することが難しいのでは?という話になり、中学校入学の制服を購入するタイミングをターゲットにするアイディアが出ました。

Nana:チームでの議論の中では様々なターゲット設定の話が出ました。 
学生に関しては、中学生や高校生の話をしながら、小学生までターゲットをひろげるのかという議論もありました。
自分たち自身、悩みながら性の在り方を獲得してきた経験があり、そのプロセスにも意味があったと考えています。だからこそ、悩みが顕在化しない時期に届けることが良いことなのか、という点については長い時間をかけて議論を重ねました。 

上山:皆様、あらためて素晴らしい課題発表を頂き有難うございました。 
お客様からお話をお聞きしてみると、やはり悩みの起点はバストに対してポジティブな気持ちで向き合えなかった、という二次性徴期を迎えた学生時代の経験にあるようです。お客様から届いた、「もっと早くNstyleに出会いたかった」という声に応えるため、学割など若い世代のみなさまにも手に取っていただきやすい取り組みを進めてきました。
しかしながら、下着やバストの悩みを持つ当事者である学生ご本人が、家庭や学校で相談しにくさを感じています。そういった背景のもと、学校という特殊な環境で商品をご紹介していくこと、学生さんや保護者の方にストレートに届けていくことの難しさを感じています。

学生世代に届けていくために、皆さんの目線からどのようなことが考えられるでしょうか? 

Nana:いま、AO入試のための課外活動の需要が高まっているので、そこを意識する高校生に投げかけてみるのはどうでしょうか?
自身の学校に紹介してもらうなど、ハブになって活動していただくこともできるかもしれません。
フェムケアに関する活動をしている団体もあり、今後も盛り上がっていくと思います。他にエシカル消費の意識を盛り上げる活動や女性の人権問題などに関心がある人もおり、SNSを通じて大規模に活動している団体もあるのでオンラインで繋がることができるのではないでしょうか。 

Mari:私が、通っていた中高一貫校では、確かに課外活動を積極的にやっている人は多かったです。そういった方々に自己成長と掛け合わせて声をかけると広がりやすいかもしれません。 

Ayu:子ども達の卒業記念として、『Nstyle』の商品券をプレゼントするなどもあるのではないでしょうか。 

Ryo:自分としては、幅広い層に届けてスタンダード化するということを考えていくべきだと考えています。 
エル・ローズさんの地元である福井で、中学校の入学祝として学校や自治体を通してプレゼントするのはどうでしょうか。マーケティング的にはその後の買い替え需要も狙えますし、当事者研究や市場作りにもつながっていくことになると思います。困っている方を助けるという面で役に立つことですし、自治体や学校にとっても良いPRになるので、文脈としても受け入れて頂きやすいと感じます。 

上山:今回は新しい視点をたくさん頂き、想像していた以上にとても濃い座談会になりました。 
私自身も、この『Nstyle』という商品と出会って、これまで女性として歩んできた時間やモヤモヤの答え合わせをしているような感覚を持っています。それを様々な立場、世代の方と共有できるということも『Nstyle』の存在意義のひとつだと感じています。今後も学生の皆様とこういった形で意見交換を重ねていけたらと思っています。
皆様、本当に貴重な機会を有難うございました! 

座談会を終えて(APSPから) 

性の価値観の問題は、近年特に大きく顕在化した社会課題のひとつだと考えています。そして、これまで声をあげづらかったこの問題については、当事者の方々から積極的に声があがるようになり、大きく前進している分野であると思います。 
しかし一方で、性別・世代間の意識のずれも未だに大きく、社会の構造として変化を起こしづらい特定の領域があることも感じる分野です。 
今回の座談会では、性の問題に悩む個人に対して前向きな選択肢を与えることのできる『Nstyle』の社会的意義を改めて感じるとともに、プロダクツを起点に様々な方にこの問題を認識していただくきっかけになる、という大きな可能性を感じました。 
このような学生さんとのコラボレーションを起点に、新たなムーブメントを起こす取り組みが始まることに期待したいと思います! 

 

各種お問い合わせ

お気軽にお問い合わせください。