ソーシャルプロダクツ・インタビュー<br>―イオンリテール株式会社―

2016/11/24

ソーシャルプロダクツ・インタビュー
―イオンリテール株式会社―

今年5月に発売開始となった「トップバリュ fururi」(以下「ふるり」)は、ビニール生地と傘骨をそれぞれ組み合わせて着せ替えることができる、新しいビニール傘です。使い捨てが当たり前だった従来のビニール傘とは違い、「捨てないビニール傘文化」を提案する同商品は、今年の第13回エコプロダクツ大賞の優秀賞にも選ばれました。

今回は、イオンリテール株式会社・衣料商品企画本部の小田嶋様と西村様に「ふるり」の開発に関するお話を伺いました。

―はじめに、「ふるり」の開発が始まった経緯について教えてください。

日本では多くの人がビニール傘を使用しています。値段も手頃で、駅前やコンビニでも売っているため非常に便利です。しかし、便利である反面、廃棄量が大きな問題となっています。日本では1年に6千万〜7千万本のビニール傘が販売されていると言われています。台風の後には、たくさんのビニール傘が街中に捨てられている様子を目にすることがあり、この現状を変えられないかと考えました。イオンとして商品を通じて環境への負荷低減や社会貢献をしたいという思いが、「ふるり」発案の発端です。

 

―環境配慮の側面から、商品の特長を教えてください。

「ふるり」には、環境面に配慮した3つの特長があります。1つ目は、柔軟性と強度を備えた樹脂製の傘骨です。樹脂製の傘骨は、柔らかくて折れにくいため、強風で反り返っても元に戻すことができます。壊れにくい傘であるため、長く使えて廃棄量削減に繋がります。

2つ目は、ビニール生地と傘骨に分解し、自分好みに着せ替えができることです。透明や白などデザインが限られていた従来のビニール傘とは違い、「ふるり」は好きな色や柄を選んで最大46通りの組み合わせを楽しむことができます。傘を洋服に合わせて変えたいと考える女性は多いので、その日のファッションに合わせて傘骨の色や、ビニール生地の柄を変えていただけます。これまでの「一度使ったら捨てる」というイメージから脱却し、繰り返し使いたくなるビニール傘にしました。

特長の3つ目は、ビニール生地の原料の一部に、二酸化炭素の排出量を抑えるサトウキビ由来のグリーンポリエチレンを使用していることです。通常の傘は分解に手間とコストがかかるため、そのまま埋め立てられてしまうことが多いのですが、「ふるり」はビニール生地と石突き、傘骨に分解できるので、ごみの分別がしやすくリサイクルに繋がる商品です。

以上のような特長から、同商品は3R(リデュース、リユース、リサイクル)を実現した環境にやさしいビニール傘であると言えます。

―「ふるり」はカンボジアの教育支援にも貢献しているとお聞きしました。

お買い上げ金額の一部を公益財団法人イオンワンパーセントクラブを通じて、認定NPO法人 難民を助ける会「AAR Japan」に寄付し、カンボジアで教育支援に還元していきます。

「ふるり」の生産国であるカンボジアに出張に行った際、カンボジアの働く方々や子どもたちの貧困を目の当たりにしたことをきっかけに、「ふるり」を通じて貢献したいと考えました。今後、カンボジアのイオンでも「ふるり」を販売できたらと考えています。現地の人々にも自分たちが作った商品を手に取ってもらうこと、その売り上げがまたカンボジアの子どもたちの教育支援に繋がっていくことにより、有意義な働き方や仕事にやりがいを感じてもらえたらと思います。

 

―「ふるり」というネーミングは、とても可愛らしくて親しみやすいですね。どのように決まったのでしょうか。

開発当初、社内でも様々な案を募ったのですが、なかなかぴったりなネーミングが見つからず決まらなかったのです。イオンでは商品を通じて「持続可能な開発のための教育(ESD)」などの教育活動を行っているのですが、岡山県にある岡山一宮高等学校にて同商品を紹介する機会がありました。この時はまだ商品名が決まっていなかったのですが、生徒である山崎紀奈里さんが非常に興味を持ってくださり、名前を提案してくれたのです。「雨がふる」の“ふる”と、「リサイクル」の“り”を組み合わせて「ふるり」という名前に。そして生産地のカンボジアの女性たちの笑顔がふんわりしていると山崎さんが感じたことも、由来のひとつです。高校生の柔軟な発想を活かし、素敵なネーミングに決まりました。

―PRでの面で工夫していることがあれば、教えてください。

商品を閉じたまま販売すると、他の傘との違いが分かりにくいため、接客の場面で実際に商品の良さを説明したり、商品のストーリーや使い方を紹介するDVDを売り場で放映しています。また、トップバリュのホームページでは生地の張り替え方法を動画や図面で分かりやすく伝え、「ふるり」の魅力を知っていただけるように工夫しています。購入してくださったお客様からは「こんな傘がずっと欲しかった。やっと発売したのね」という声をいただくこともありました。ファッションに関心の高い10代〜30代の女性がメインのターゲット層ですが、環境に配慮した商品なので年代問わず環境への意識が高いお客様に好まれると感じています。中にはご夫婦で兼用されている方もいるようです。

また、実際に販売を行う従業員の教育も大切だと考えています。年に2回の社内展示会では、実際に商品を使ってコンセプトやストーリーを説明し、十分に理解した上でお客様にもご案内ができるように従業員向け説明会を実施しています。展示会の場に限らず、商品理解を高める場をさらに増やし、社内での意識づくりを進めていくことが今後の課題とも言えます。

 

―生産におけるコスト面の難しさなどはありましたか。

もともとビニール傘は気軽に購入できる商品であり、一般的には500円前後の価格で販売されています。「ふるり」は原材料の一部に植物由来のものを使用していることもあり、一般的なものよりも生産コストが高めになっています。無地の長傘が880円、プリント柄は1,480円と、ビニール傘にしては高めの価格設定ではありますが、これは商品に見合った適正な価格だと考えています。「ふるり」の機能性、デザインを十分に伝え、多くの方に手に取っていただけるようにしていきたいです。

 

―最後に、今後の展望がありましたら教えてください。

「ふるり」のプロジェクトは今後も継続していく予定なので、魅力的な商品展開を行い、ターゲット層の拡大を狙っていきたいです。このビニール傘は、イオンだからこそできるCSVの実現です。トレンドを取り入れて、「使って楽しい」「着せ替えて楽しい」と思っていただける商品を提案していくことが売り上げの基盤となり、結果としてカンボジアの子どもたちの教育支援などといった社会貢献や3Rの推進といった環境保護に繋がっていくというサイクルを持続していきたいです。国内だけでなくカンボジアのより良い社会作りにも貢献していくことを目指します。

 

―ありがとうございました。

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