ソーシャルプロダクツ・インタビュー<br>―株式会社和える―

2020/09/30

ソーシャルプロダクツ・インタビュー
―株式会社和える―

株式会社和えるは、「先人の智慧を私たちの暮らしの中で活かし、次世代につなぐこと」を目指し2011年3月に創業。全国各地の伝統産業の職人さんと共に、赤ちゃん・子どもの頃から使える『こぼしにくい器」 、『こぼしにくいコップ』などの商品の企画・開発・販売する ❝0歳からの伝統ブランドaeru❞を始め、伝統を次世代につなぐ様々な事業を展開しています。子どもだけでなく、大人までみんなが使いやすく一生ものとして長く使える日用品を、日本各地の伝統産業の技法を活かし大切にしてつくっている同社は、ソーシャルプロダクツ・アワード2014で「ソーシャルプロダクツ賞」を受賞している企業でもあります。そんな同社の代表取締役である矢島里佳さんにお話を伺いました。

─会社を興そうと思ったきっかけは、どんなことだったのでしょうか。

小学校時代からジャーナリストを目指していました。自分が何かを伝えることによって、その場にいない人とも経験を共有できるということに、面白みを感じていたからです。そうしたことから、メディアに多くの人材を輩出する慶應義塾大学の法学部政治学科に進学したのですが、入学してすぐに自分は「何を」伝えたいのかということを考えるようになりました。

いろいろ考えるうちに、中学・高校のときに茶華道部に入っていた経験から、お茶室にいるときに感じた日本の伝統の魅力に思い至ったのです。伝統産業品が持つ「人に語りかける力」とは何なのか、伝統産業の物づくりはどのようなものなのか、といったことに関心が芽生え、職人さんに会ってみたいと思うようになりました。そこで、自ら企画を立てて、日本全国の職人さんを取材して原稿を書き、旅行会社の会報誌や週刊誌のコラムにて連載させていただきました。しかし、文章だけでは伝統産業を伝えることには限界があると感じました。

いま日本は、多くの子どもたちが自国の文化を知らないまま大人になってしまう状況にあります。ですから、生まれたての赤ちゃんに日本の伝統産業品を贈ることができれば、日本文化を知る機会を生み出すことができると思ったのです。そこで、伝統産業市場と赤ちゃん・子ども市場を和えた新たな市場を生み出そうと決意して、大学4年のときに和えるを創業しました。

 

─「先人の智慧を現代の暮らしの中で活かす」という考え方は、たとえばどのような形で製品に取り入れられているのでしょうか。

『津軽塗りの こぼしにくいコップ』 を例にお話しましょう。津軽塗りは一般的には全ての面を研ぎ出し変わり塗りにすることが多いのですが、「こぼしにくいコップ」の上部は研ぎ出しではなく、黒漆で塗られています。現代の食卓にも馴染むような色合いを考えたのです。上に黒色、下には鮮やかな色があることで、教えるのではなく子どもたちが自発的に、持つ場所を意識することができるようにも工夫しています。

 

─御社は積極的に商品の「お直し」を推奨しています。これはどのような観点からでしょうか。

21世紀に誕生した和えるは、常に良い循環を生み出すビジネスモデルでなければならないと思っています。幼いうちからホンモノに触れ、モノを大切にすることを自然と学んでほしい。そのために、一日でも長く使えるように製品をデザインし、壊れたらお直しをさせていただく。「ものを大切にする」という日本の精神性も含めて次世代につなげたいと考えています。 ❝0歳からの伝統ブランドaeru❞は、幼少期だけお使いいただけるのではなく、「大人になってもずっと使い続けていただけるブランドなのです。

 

─他社の類似製品と比較した場合、価格設定がちょっと割高な感じもします。これはソーシャルプロダクツ故の理由があるのでしょうか。

関わる人全員が豊かに暮らすことができるように、価格を設定しています。そもそも暮し手が極端に低価格を求めた結果、職人さんたちが生活できないような状況に陥り、伝統産業の衰退に拍車がかかったのです。

伝統産業の製品をお届けするまでには、職人さんたちが原材料を仕入れるコスト、彼ら彼女らの技術料、デザイナーのデザイン料など、様々なコストがかかります。職人さんたちと一緒に良いものをつくっていくためには、私どもが現地に赴く必要もあります。こうしたことの積み重ねに要するコストを考えて、価格を設定しています。ですから私は続けていくために必要な適切な価格だと思っています。ソーシャルプロダクツであることは価格には一切影響を与えていません。

 

─aeruの直営店を海外で展開することに積極的でないとのことですが、どうしてでしょうか。

「日本人が日本のことを知らない」という問題意識から始まっています。ですから、たとえばaeruが海外でもてはやされて逆輸入で日本に持って来るというのは、本質とずれてしまうと考えています。まずは、日本の子どもたちに、自国の文化に誇りや自信、愛着を持っていただけるような環境づくりから始めたいのです。

 

─読者へのメッセージと今後の貴社の展開についてお聞かせください。

自分たちが実現したいことを楽しくやり、お客様にも喜んでいただけ、さらに社会も喜ぶ、という「三方良し」を生み出してこそ、21世紀の企業の価値があると思います。先人の智慧と、現代を生きる私たちの感性や感覚を和えることで、より魅力的な日本をつないでいくことができるのだと思います。
2014年には東京『aeru meguro』、2015年には京都『aeru gojo』をオープンしました。
ぜひ日本の伝統に出逢いに訪れていただけますと嬉しいです。

和えるWEB:http://a-eru.co.jp

(当記事は2015年5月に発行された当協会ニュースレターにて紹介したものを、2020年9月現在の情報に改めた記事となっております。)

この企業について

株式会社和える

東京都品川区上大崎三丁目10番50号

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