ソーシャルプロダクツ・インタビュー<br>―ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社「カートカン」―

2020/08/06

ソーシャルプロダクツ・インタビュー
―ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社「カートカン」―

 

缶の形をした紙製の飲料容器、カートカンをご存知でしょうか。国産間伐材を30%以上使用し、売上の一部を国内の森林整備のために寄付しているカートカンは、1996年に登場しており、商品を通じた日本の森林育成や地球温暖化防止の先進的な取り組みです。当時の商品開発から仕組みづくり、そして今日までの取り組みについて、いち早くカートカン商品の販売を開始された、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社様に伺いました。

 

―もともとカートカンは欧州で生まれたと聞いていますが、日本に導入したきっかけは何だったのでしょうか?

1995年に、容器包装リサイクル法*1ができたことが、大きなきっかけです。これが、「本業に近い」ところで、「環境にやさしい」ことができないかを検討する契機となりました。ちょうど時を同じくして、凸版印刷さんから欧州に存在していた「カートカン」を日本に導入しないか、という提案がありました。それまで見たことのない仕様で特徴的でしたし、軽量・減容性*2という点で、環境に配慮した商品を好む企業さんへの提案商品として付加価値があると判断し、早い段階で、導入が社内決定されました。

 


発売当初の商品(90年代)

 

―導入決定から商品を世に送り出すまでのことについて教えていただけますか?

何しろ欧州仕様になっているので、日本で利用するためには、自動販売機の落下の衝撃に耐えられる強度の問題や、賞味期限が短いという問題も克服しないといけませんでした。そこで凸版印刷さんと半年以上かけて改良を行いました。

1996年の発売当初、実は、国産の間伐材を使用するということはあまりうたっておらず、「容器のリサイクルができて環境にやさしい」、という点を売りにしていました。ですから、販売先は、缶のゴミが出ない方が好ましい場所として、競技場や競馬場、公園や官公庁といった公共施設で多く扱っていただきました。並行して開発した、カートカン専用の自動販売機も、当社独自の動きでした。

 

―発売開始から今日まで、そのような取り組みを行い、どのように普及させてきたのでしょうか。

お伝えしたように、発売当初は環境にやさしい容器、ということだけを売りにした商品でした。しかし、2003年に林野庁の林業白書で、国産の間伐材を30%以上使った、日本の森林育成と地球温暖化防止に貢献する商品、として紹介されたことで、商品としてもそれをPRできるようになりました。これを契機に、環境配慮型商品として、より付加価値を高めていったと思います。

2004年には、業界をあげてカートカンの普及をはかっていくために、凸版印刷さんが中心となり、「森を育む紙製飲料容器普及協議会(もりかみ協議会)」という組織を設立しました。売上の一部を国土緑化推進機構へ寄付し、植林のために使用するという、植林から間伐までの循環型の仕組みは、この時期にもりかみ協議会でつくりました。

2006年には、カートカンが、第3回エコプロダクツ大賞(農林水産大臣賞)に選ばれ、2009年には、政府が推進する「エコポイントの活用によるグリーン家電普及推進事業」のエコポイント交換商品に、もりかみ協議会の会員企業11社26品のカートカン商品が選定され、交換対象ランキングの上位に入りました。

最近では、2019年のG20に関連した場(国内各地で行われた大臣会合)において、「カートカン」を世界各国から参加された方々に試飲いただく機会を設けたと、もりかみ協議会から聞いています。

 

商品裏面に掲載している啓発表示

 

―最近はどのような取り組みをされているのでしょうか。

昨今、持続可能な開発目標(SDGs)が注目され、社会的な重要課題として「脱プラスチック」等に関する記事が、2017年を起点に急増しています。それに伴い、政府、自治体や企業などで「プラスチック削減」等の対応が進み、会議の場等で「カートカン」を使用した商品が選ばれています。当社ではこうした実態を受け、2020年2月より、会議向けドリンクとして「旨みまろやか緑茶」を発売しました。この商品は、会議等のオフィスシーンで飲用いただく事を想定し、会議中に自分のドリンクだと区別できるよう、デザインを6種類で展開しています。デザインは、山や空をイメージした背景に、動物のリスや折り紙の鶴、紙飛行機、風車など可愛らしいアイテムをポイントに入れ、心が和むように表現しています。

 

会議時のカートカン使用(イメージ)

 

―最後に、今後の商品展開の戦略についてお聞かせ下さい。

環境配慮型商品として開発された「カートカン」ですが、紙でできていることで、代替需要として見直されつつあります。これからも当社は「カートカン」を通じて、ますます高まる環境意識の変化に対応し、需要に応じた商品を提供できればと思っております。

 

「旨みまろやか緑茶」6種類

 

*1一般廃棄物の大部分を占める容器包装廃棄物はリサイクルが不十分であったため、容器包装の資源の有効利用の図るため、制定された。

*2廃棄物の最終的な処分容量が少ない性質。

 

(当記事は2013年3月に発行された当協会ニュースレターにて紹介したものを、2020年7月現在の情報に改めた記事となっております。)

 

【参考】

「カートカン 飲んで育てる日本の森林」『ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社 HP』

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ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社

愛知県名古屋市中区栄3-27-1

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