ソーシャルプロダクツ・インタビュー<BR>―H&M―

2014/08/22

ソーシャルプロダクツ・インタビュー
―H&M―

スウェーデン発のアパレルブランドH&M。2008年に日本上陸し、銀座店に5千人以上が行列を作り、一大ブームを巻き起こしました。現在は日本国内に40店舗を展開。低価格帯のファッションで若者の支持を得る一方で、古着回収、労働者の権利保護、ワークライフバランスの向上、オーガニック素材の使用といったソーシャル分野の取り組みにも注目が集まっています。今回は、H&M社におけるサステナビリティの実現について、広報の工藤真希さんにお話を伺いました。

―今年4月に、コンシャス・エクスクルーシブ・コレクション(オーガニックコットンや、リサイクルコットン、リサイクルポリエステル、テンセル、オーガニックシルクやオーガニックレザーなど環境に配慮した素材を使用したコレクション)が発売され、大きな話題となりました。実際に、反応はいかがでしたか?

このコレクションは発売後間もなく売り切れるほど好調な売れ行きで、発売当日に店舗にお並びくださったお客様もいらっしゃったほどでした。日本はファッション感度の高いお客様が非常に多いので、このようなデザインやクオリティにこだわったコレクションは発売と同時に売り切れることも多いです。

 

―日本はヨーロッパに比べて、ソーシャル意識がそれほど高くない現状があるかと思いますが、いかがでしょうか。

私もそのようにイメージしていたのですが、最近、日本人の意識は決して低くないと思うようになっています。こう思う理由の一つにH&Mが力を入れている古着回収活動があります。H&Mは2013年の2月より(日本では3月より)、全世界の店舗で古着の回収活動をスタートしました。廃棄物の量を減らすことによって、ファッション業界が環境に与える影響を小さくするとともに、水、石油、綿などの天然資源を節約したいという思いが背景にあります。この古着回収は、古着1袋につき、3000円以上のお買い物でご利用になれる500円クーポンが配布されるというものですが、1店舗あたりの回収量は日本が世界でだんとつの1位なのです。

今年4月にH&MのファッションとサステナビリティのスポークスパーソンのCatarina Midbyが来日した際、彼女は「日本のメディアの皆さんは、とても謙虚で日本は環境に配慮した活動が進んでおらず意識が低いとおっしゃいますが、私はそうは思いません。古着回収活動の量を見てもそうですし、日本のゴミの分別には本当に驚かされます。古くから自然と共存してきた文化というものも根付いているように思います」と話していました。

―環境意識の高い北欧発ブランドとして早い時期からソーシャルな取り組みをされていますが、企業の社会的責任について、H&Mとしての考えをお聞かせください。

H&Mはスカンジナビアのブランドとして、かなり早い時期からコンシャス活動、社会活動をスタートさせました。社会的責任は我々にとってもちろん重要なもので、H&Mのすべての事業は経済的、環境的、社会的に持続可能な方法で運営されなければならないと考えています。

H&Mの持続可能性に対する努力は、社会的・環境的な企業責任に根ざしたもので、この取り組みに関しては世界のファッション業界の最先端を歩んでいると自負しておりますし、責任の大きさも実感しております。ファッション、デザイン、持続可能性は価格が問題ではありません。持続可能性は、H&Mの事業の中核をなす理念であり、何をする上でも、今の世代と未来の世代の両方にとって必要とされることを、尊重しなければいけないと考えています。

 

―低価格ファッション=大量消費というイメージがありますが、衣類回収などを行い、生活者の意識改革という役割を果たしていらっしゃる部分も大きいように思います。持続可能性を考えた取り組みとして他にどのようなことをやっていますか。

古着回収は私たちがしている取り組みのほんの一部で、例えば最近もClever Careという新たなイニシアチブをスタートしました。これはお客様が衣類を使われている間に、洗濯時の水を節約したり、アイロン使用の頻度を下げたりすることなどを呼びかけ、環境への負荷を低くしようとする取り組みです。

この他にも、本物の毛皮を使用しない、皮革製品は食肉用に飼育された牛、水牛、羊、ヤギ、豚のみの使用に限定する、絶滅危惧種に属する木材、貝殻は使用を禁止するなど、数多くのプロダクトポリシーを設けております。また、サプライヤー(工場側)への権利についての教育の徹底、公正な生活を可能にするための賃金引上げの政府への交渉などにも取り組んでいます。持続可能な社会の実現にむけたH&Mコンシャス基金※1の設立もあります。

洋服の素材として特によく使うコットンについては、全てのコットンを、2020年までにサステナブル・コットン(環境負荷の低いコットン オーガニックコットン、リサイクルコットン、ベターコットン※2を含む)に100%切り替えるという目標があります。これはかなりの先行投資を伴うものですが、一旦サステナブル・コットンに移行できれば、化学薬品の費用などができるだけ少なく抑えられる等、長期的にプラスになります。

これからも、H&Mは、持続可能性をただ口にするだけではなく、決断力と情熱、チームワークをもって有言実行を続けていきます。

 

―持続可能な社会の実現に向けたビジョン、将来像について教えてください。

H&Mでは「サステナビリティ」を、実現すべきこととして考えており、そのために「常に進歩し続ける」という明確な方向性を持っています。H&Mのビジョンは生産工程の隅々に至るまで、経済的、社会的、環境的に持続可能な経営を目指すということです。これが実現すれば、ビジネスをする上で必要とする資源が少なくてすみますし、世界中のコミュニティのより良い生活のための貢献ができるのです。

H&Mは、持続可能性に関する活動に対して多大な投資を行っておりますが、これは長期的にみてH&Mにとって、そして環境にとっても良いことであり、お客様も評価してくださると考えているからです。現在はこのような取り組みが注目されていますが、私たちH&Mはこのコンシャス活動、持続可能性に対する活動が、将来、お客様にとって「当たり前」となる未来を目指しています。

 

※1 H&M Conscious Foundation(H&Mコンシャス財団)

2013年、創業者一族であるステファン・パーション家が5億SEK(スウェーデンクローネ:1SEK=約14円 2014.8月現在)を出資して設立された財団。全世界でオンライン投票を実施し、「教育」「きれいな水」「女性のエンパワーメント」の3分野を財団の重点分野に決定。ユニセフ(国連児童基金)、WaterAid、CAREの3つの団体とパートナーシップを結び、連携して支援を行うことになった。関係するプロジェクトに、同財団から1億8,000万SEKが出資される予定となっている。

※2必要以上に農薬や水を使わないコットン

H&Mは 2013年度の認証オーガニックコットン使用量が世界第1位

(出所:非営利団体Textile Exchangeが毎年発表するオーガニックコットンレポート)

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