ソーシャルプロダクツ・インタビュー<br>―株式会社伊藤園―

2015/09/28

ソーシャルプロダクツ・インタビュー
―株式会社伊藤園―

「お~いお茶」でおなじみの株式会社伊藤園。1985年日本で初めて「缶入り煎茶」を発売し、「お茶は、家でしか飲めない」という概念を覆した緑茶飲料の先駆者です。「缶入り煎茶」は1989年に「お~いお茶」に商品名を変更後、売り上げを伸ばし、2011年12月末現在で累計販売数200億本を超えました。開発当初より「急須で入れた自然のままのおいしさ」にこだわり続ける一方で、社会的な側面ではどのような取り組みを行っているのか、広報部広報室中川寛子さんに伺いました。

 

―はじめに、どのような社会的取り組みを行っているのかお聞かせください。

当社は飲料メーカーとして、地球環境を守り、次世代に継承し、持続可能性を確保することが重要な責務であると考えており、リサイクルやゴミの削減など、様々な環境に関する取り組みを行っています。主力商品の「お~いお茶」は、急須で入れるお茶と同様に茶葉から抽出しているため、販売量の伸びとともに、茶殻の排出量も増加します。発売以来、肥料や飼料などに有効活用してきましたが、2000年より、20年先の未来を見据え、独自の「茶殻リサイクルシステム」を開発しました。

また、茶葉生産では就農者の高齢化や後継者不足などの問題なから就農人口、茶園面積ともに減少傾向にあるため、茶産地育成事業にも取り組んでいます。

 

―茶殻リサイクルシステムについて詳しく教えてください。

茶殻には消臭や抗菌効果のある、緑茶ポリフェノールなどの有効成分が多く残っており、それを有効に利用できないかと、茶殻配合製品の開発に乗り出しました。

しかし、水分を含んだままの茶殻は、運搬するのが難しいのです。運送用に乾燥させるには、茶殻10tの乾燥に約500ℓの灯油を使用し、それにともなうCO2排出量は約1.3t、これでは何のためのリサイクルなのか分かりません。

そこで、二次的な燃料を使わずに、水分を含んだ茶殻の腐敗を抑え、輸送・常温保存できる技術を2001年に開発しました。この独自の技術によって、茶殻を配合した「ボード(木質繊維板)」、「樹脂」、「紙製品」、「建材」などの基礎素材が誕生しました。これらは原料の一部を国産の茶殻に置き換えてできた素材ですから、海外原料の削減にも貢献している製品といえるでしょう。

 

―茶殻リサイクルシステムから生まれた製品には、どのようなものがありますか?

現在、畳、ベンチ、段ボール、ボールペン、健康サンダルなど、約40種類あり、それらが実際に販売・利用されています。身近な製品を通じて、お茶の抗菌効果・消臭効果という利点についても、多くの人に知っていただきたいので、今後も積極的に茶殻配合紙製品を展開してまいります。

 

―茶産地育成事業についてお聞かせください。

現在、日本の農業は農地の遊休化や農家の後継者不足等の問題を抱えています。ただ、日本の緑茶飲料市場は拡大しており、そうした状況の中でも「お~いお茶」ブランドに適した良質な茶葉の確保が必要です。そこで、高品質な原料茶葉の安定調達と効率化、そのための生産農家の育成を行うべく、取り組んでいるのが茶産地育成事業です。1970年代に茶農家から製品に使用する茶葉を全量買い取る「契約栽培」をスタートし、2001年からは地域行政や組合、生産農家の方々と協力して耕作放棄地などを活用した大規模茶園を造成し、栽培技術・ノウハウを提供すると共に収穫茶葉を全量買い取る「新産地事業」を行っています。お茶は植えてから収穫までに5年ほどかかり、茶農家の方にとっては大きなリスクを伴いますが、当社の事業では収穫した全量を買い取ることにより、安心して茶葉の栽培に従事していただけるようになっています。

 

―新産地事業は具体的にはどのあたりで展開されているのでしょうか。

現在、宮崎県都城区、大分県杵築区などで展開しており、茶園の造園面積は740ヘクタール規模に拡大しました。将来的には2,000ヘクタールを目標としています。さらに、世界での緑茶原料の需要増を見込み、日本とは季節が逆で、風土が似ているオーストラリアでも1994年に茶産地育成事業をスタートしました。ホームページでは、各茶産地を360度のパノラマ画面で見ることができます。ぜひご覧になってください。

 

―人や地球、社会への配慮は生活者に伝わりにくいポイントだと思います。マーケティング上で工夫されていることはございますか?

お~いお茶「お茶で日本を美しく。」キャンペーンでは、パッケージプロモーションや店頭告知、TV-CMの放映などを通じて、自然環境を守ることの大切さを多くの方に伝達できるように取り組んでいます。また、当社社員が各地の環境保全・整備活動にボランティアとして参加する、被災地で「おいしいお茶のいれ方」をお伝えするなど、直接お客様と触れ合う活動も大切にしています。こうした取り組みから「お~いお茶」が、エコな製品という枠を超えて、より良い社会づくりに繋がるソーシャルプロダクツとして、多くの方々に認識していただければ幸いです。

 

―今後、取り組んでいきたいことをおきかせください。

当社は、「自然、健康、安全、良いデザイン、おいしい」というコンセプトのもと、その時代のお客様のニーズに合わせた製品を開発しています。環境や社会への配慮の面では今以上に、「世界のティーカンパニー」となることを目指しており、世界のお客様にお茶の伝統から最先端までの価値をお届けし、健康で豊かな生活をサポートしてまいりたいと考えております。

この企業について

株式会社伊藤園

東京都渋谷区本町3丁目47番10号

https://www.itoen.co.jp/

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