ソーシャルプロダクツ・インタビュー<br>―株式会社JTB―

2014/10/24

ソーシャルプロダクツ・インタビュー
―株式会社JTB―

旅行会社大手のJTBグループは、一般客と社員が一緒に清掃や植樹を行う「JTB地球いきいきプロジェクト」を1985年から実施(当時の名称は「観光地クリーンアップキャンペーン」)し、長年CSR活動に力を入れてきた企業として知られています。近年は社会課題解決型の商品開発にも力を入れており、今年9月には、復興応援商品「東北ふるさと課(化)シリーズ 地酒(蒼天伝)海中貯蔵と貯蔵酒引き上げの旅」がJATA ツアーグランプリ 2014 観光庁長官賞を受賞するなど、注目を集めています。そんなJTBの活動について、ブランド戦略推進室グループリーダーの原禎芳さんに伺いました。

 

―最初に、今回受賞が決まった「東北ふるさと課(化)シリーズ 地酒(蒼天伝)海中貯蔵と貯蔵酒引き上げの旅」について、教えてください。

気仙沼では震災前から、お酒の入った瓶を海に沈める独特の貯蔵法をおこなっていました。海の幸に合うお酒を開発してきた酒蔵が考えた貯蔵方法です。日本酒を一定期間、海中で寝かせておくと味がまろやかになっておいしくなるのです。震災で中断をしていたのですが、被災地を何度も訪ねたくなるツアーを開発しようと考えていた時に、社員がそのユニークさに着目し、ツアーに組み入れました。日本酒を海に沈めるツアーがあり、その瓶を引き上げるツアーがあり、少なくとも2回は足を運びたくなる。単にお客様が被災地を訪ねるだけでなく、体験し、お酒と一緒に地元の海の幸を楽しみ、地元の方とふれあい、何度もリピートして第二の故郷のように感じていただきたいと願って誕生した商品です。

 

―「東北ふるさと課(化)」についてもう少し詳しくうかがえますか? 

被災地の人口減少による経済の落ち込みを解決する方法の一つとして「交流人口」の拡大があり、「東北ふるさと課(化)」はそれを増やすことを目的としたプロジェクトです。訪れた人に東北を自分のふるさとのように感じてもらいたいという願いを込めて「ふるさと課(化)」と名付けました。

JTBは東日本大震災の2ヶ月後以来、ボランティアの方々と被災地を結ぶ「JTBボランティアサポートプラン」を行っています。このプランで、約1万人近いボランティアの方々を被災地へと繋いできました。ただ、震災から年月が経つにつれ、私たちに必要とされる取り組みも変わってきています。現在、被災地では人口の流出、雇用や住宅の確保、高齢化社会などが課題となっていますが、「被災地の現状を知る」から一歩進んで「被災地の未来を一緒に創っていく」という想いのもと、2013年に「東北ふるさと課(化)」プロジェクトを発足させました。

 

―「海中貯蔵と貯蔵酒引き上げの旅」は、地元の方、参加者双方に好評だったそうですが、なぜこのような商品を開発できたのでしょうか?

通常、ただ被災地へ行くという企画では、地元の方の理解や協力が十分に得られず、一方通行になりやすいのですが、今回進められている理由としては、震災直後からボランティア事業を行ってきて地元との連携がとれていること、そして、社員にも私たちならではの視点で東北の魅力を発見し、光を当てていこうという意識が高まってきたことが挙げられると思います。「東北の未来を一緒に作っていこう」とする姿勢と、「今の被災地にほんとうに必要なことは何か」という視点があったからこそ、こうした商品を作ることができました。この商品のアイデアは東京の社員から生まれたのですが、その土地にいると当たり前だったり、日常のことになっていたりして、魅力になかなか気付かないことはあります。外からの視点だからこそ気づく魅力であり、地域の方々と一緒に作ってこられたことが、今につながっていると思います。

 

―地域活性化、地域交流事業から誕生した他の事例を教えてください。

全国でさまざまな地域活性化のための商品を開発していますが、たとえば、北海道で販売されている「パ酒ポート」というスタンプラリーは、酒造メーカー・ワイナリー・ウィスキー醸造所への人の誘致のために作られた商品です。北海道にはいいお酒がたくさんあるのにあまり知られておらず、消費も伸び悩んでいました。「パ酒ポート」は地元の方との雑談の中からひらめいたアイデアが原点となり、年々取り組みが拡大されています。

また、長野県阿智村は、冬のスキーシーズン以外の集客が課題となっていましたが、地元でヒアリングを行う中で、星がとてもきれいに見えることがわかりました。さらに調べてみると、「星が最も輝いて見える場所」の第一位にも認定されたとのことで、2012年、「日本一の星空ナイトツアー」という商品をスタートさせました。星空が観光の目玉になるというアイデアをもとに、地域活性化のための協議会を作って地元と一緒に開発した商品です。地域が自立できるようにとJTBの専売とせず、他社も販売できるようにしています。参加者が毎年増え、今では集客の目玉にもなっています。

 

―JTBのこれからのビジネスについて、教えてください。

時代とともにビジネスの役割は変わっていくものです。私たちはその時その時の社会からの求めに応えていかなければなりません。JTBは2006年に地域ごとに分社化を行いましたが、これは各地域で地域に向き合ってビジネスを行えるようにするものです。自治体やさまざまな企業・団体等とも協力し、地域の課題解決のための取り組みを積極的に行っています。今後も、地域の方々との協力のもと、私たちならではの視点から、社会の課題解決につながる商品の開発・販売に力を入れていき、地域の方、お客様双方に喜ばれる取り組みを拡大していきたいと思います。

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東京都品川区東品川二丁目3番11号

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