【ソーシャルプロダクツ・インタビュー】<br>生ごみはごみじゃない。自分で簡単に堆肥が作れて、CO²削減にも貢献 ーローカルフードサイクリング株式会社「LFCコンポスト」ー

2022/01/27

【ソーシャルプロダクツ・インタビュー】
生ごみはごみじゃない。自分で簡単に堆肥が作れて、CO²削減にも貢献 ーローカルフードサイクリング株式会社「LFCコンポスト」ー

ご存知でしたか?家庭から出る生ごみの約90%は焼却処理されており、その際のCO²排出などが課題となっています。「LFCコンポスト」は、初心者でも簡単に生ごみから堆肥を作ることができ、生ごみの減量に取り組める体験型ツール。ベランダなどのスペースで実践でき、おしゃれなデザインも人気です。開発の背景やコンポストを習慣化する仕組みづくりなどについて、ローカルフードサイクリング株式会社代表取締役のたいら由以子様(以下敬称略)にお話を伺いました。

「LFCコンポスト」はソーシャルプロダクツ・アワード2021にて優秀を受賞しました。

(インタビュアー:APSPインターン 石原)

ローカルフードサイクリング株式会社 代表取締役 たいら由以子様

 

コンポストをやりたい人を増やすには。都市型コンポストの発想

石原:LFCコンポストは、「都会でもできる簡単、便利でシンプルなコンポスト」というコンセプトが特徴的だと思います。このようなコンセプトにいたった経緯を教えてください。

たいら:もともと20年以上前にNPO法人循環生活研究所を立ち上げて、コンポストの基材研究や普及活動に取り組んできました。ですが、コンポストを生活に取り入れてくださる方々の数は一定層から抜け出せず、いまだに家庭から出る生ごみの約90%が焼却処分されている現状でした。この課題を解決するためにコンポストをやりたい人をもっと増やすにはどうしたらいいだろう?と考える中で、着想していた都市型コンポストの商品化へといたりました。

LFCコンポスト

水や虫の侵入を防ぐ特注のファスナー付きのバッグ型。

悪臭の発生を抑える独自の配合基材(生ごみと混ぜ合わせる原料)で、

マンションのベランダなどでも簡単にコンポストが実践できる。

できた堆肥でガーデニングができる商品設計も嬉しいポイント。

 

石原:そうだったんですね!また、LFCコンポストのホームページなどで「半径2km」というキーワードをよく目にしますが、どういった意味なのでしょうか。

たいら:半径2km=生活圏・自分事として取りくめる範囲だと考えています。20年程前から個人的に使い始めた言葉なのですが、実は古代のゴミ捨て場だった貝塚も大体1.5km範囲であったり、現代のデイケアセンターの送迎サービスも半径2km内など、半径2kmにまつわることが色々あると後から知りました。

石原:たいら様が実感されていた半径2kmという考えが、古代から生活の中に存在していたんですね。

たいら:はい。より多くの方に環境問題を自分ごととして捉えてもらい、LFCコンポストで生ごみから堆肥をつくるという体験を通じて、半径2kmの範囲で持続可能な栄養循環を作っていきたいと考えています。

 

生ごみはごみじゃない。ペットのような存在のLFCコンポスト

石原:LFCコンポストのユーザーはどのような方が多いですか。

たいら:都市圏に住む20~40代がメインで、特に女性の方に多くご使用いただいています。これまでNPO法人の活動でダンボールコンポストをご提案していた時と比べると、ユーザーの年代層がかなり若くなったと感じています。

石原:現在のユーザー数は何名程いらっしゃいますか。

たいら:2020年1月にサービスを開始したLFCコンポストですが、現在は2万人以上の方にご利用いただいています

石原:ユーザーがLFCコンポストを生活に取り入れる理由にはどのようなものがありますか。

たいら: 気候変動などから地球の環境が悪くなっているのを感じて、何かやりたいと思ってはいたけれどできていなかった、生ごみを捨てるのに罪悪感があった方などがLFCコンポストを手に取ってくださっています。ご購入くださった方のうち、8割ほどは初めてコンポストを使われる方なんです。

石原:どんな媒体を通じて、ユーザーはLFCコンポストを知るのでしょうか。

たいら:口コミやSNSで知ってくださる方が多いです。またファッション系の雑誌に掲載いただくこともあり、LFCコンポストのデザインにも好評をいただいています。

石原:先日、有名人の方のインスタグラムで投稿されているのを拝見しました!シンプルでおしゃれなデザインも魅力の1つですよね。

たいら:ありがとうございます。バッグの色は黒だと虫がよりやすいのであえてグレーにして、素材はペットボトルの再生生地をオーダーメイドしたものを使用しています。

石原:こだわりのつまったデザインなんですね。実際にLFCコンポストを使用したユーザーからはどのような反響がありましたか。

たいら:「生ごみはごみじゃないんだ」「生活スタイルが劇的に変わった」「生ごみを自分で堆肥にできるなんて新しいスキルを身につけた気分」といったお声をいただいています。コンポストに生ごみを入れることでごみが少なくなるのと同時に、ゴミ袋代の削減や今まで生ごみを入れるのに使っていたレジ袋が必要なくなるなど、生活がシンプルになるのを皆さん実感されています。コンポストでは微生物の働きによって生ごみが堆肥に変わっていくので、「微生物がペットみたい」とおっしゃられる方もいるんですよ(笑)。コンポストへ名前をつける方もいたり、入れる生ごみによって反応があるコンポストを楽しんでくださっているようです。

石原:ご自身のコンポストに愛着を持って取り組むユーザーの方が多くいらっしゃるんですね。

左右端まで大きく開くバッグ口で、生ごみと基材が混ぜやすい

たいら:またLFCコンポストは、そのバッグの中で自然の一部を切り取ったような循環が行われています。生ごみから堆肥ができる過程やその堆肥を使ったガーデニングなどを通じて、栄養循環を体験できるツールとなっています。

 

サポートやコミュニティの充実で、コンポストを生活の一部に

石原:LFCコンポストをユーザーへお届けする中で、重要視していることはありますか。

たいら:継続してご使用いただき、コンポストが習慣・生活の一部となれるように、継続サポートに力を注いでいます

石原:そうなんですね!具体的にはどのようなことをされていますか。

たいら:LFCコンポストの使い方やお悩みなどを気軽にユーザーの皆様からご質問いただけるよう、LINE無料相談窓口を設けています。ご購入を検討されている方からご質問いただくこともありますよ!

石原:疑問に思ったことをコンポストに詳しいプロの方にすぐ聞けるのは安心ですね!

たいら:現在は月に1,000人ほどのユーザーの皆様とLINEを通じてやり取りさせていただいています。

その中でいただいたお声などをもとに、発売当時から25か所ほど(バッグや内袋の形態、取扱説明書など)の商品改善を行ってきました。

石原:お客さまとのコミュニケーションを大事にされているからこそ、より良いLFCコンポストができあがっているんですね。

たいら:また、半径2kmの範囲で持続可能な栄養循環を作っていきたいという想いを実現するためには、コンポストでできた堆肥の使い道を確保することも重要だと考えています。そのためのコミュニティづくりも、NPO法人の活動時代から20年以上取り組んでいます

石原:どのようなコミュニティが生まれているのでしょうか。

たいら:弊社の拠点がある福岡県の地域では、ユーザーがコンポストで作った堆肥を弊社の社員が回収し地域の菜園へ運ぶ→菜園で育てられた有機野菜をマルシェで販売→地域のユーザーがそれを購入し、生ごみはまたコンポストに入れて堆肥にするといった循環がコミュニティ内で行われています。このような活動の輪は県外にも広がっており、最近では京都市内で堆肥の回収拠点を作る「ごみカフェKYOTO」プロジェクトがはじまりました。今後は都市圏でも、マルシェなどを拠点にこのような仕組みを広げていきたいと考えています。

石原:作った堆肥をお家で使いきれないことがある方にも嬉しい仕組みですね。

たいら:地域で堆肥を回収する仕組みは、回収のための訪問がご高齢世帯の見守り機能として役立っている事例もあるんです。その他にも学校教育の現場にLFCコンポストが採用されるなど、様々なコミュニティでの活動を通じて、ユーザーの皆様の生活にコンポストを取り入れていただいています。

 

栄養循環を評価軸とする社会を目指して

石原:LFCコンポストはフランスでも販売が開始されていますが、現地の方の反響はいかがですか。

たいら:バッグ型のためコンポストだと最初気づかない方もいらっしゃったそうですが、そのデザインにご好評いただいています。フランスでは環境問題解決に向けた政策にともなって罰金が制定されるなど、環境問題解決へのアクションをしなければいけないと生活者自身がより感じていると思うので、LFCコンポストを手に取ってくださる方が増えていくことを期待しています。今後は、フランス以外のヨーロッパ圏で展開地域を増やせていければと考えています。

石原:海外でもあの素敵なデザインと使いやすさが受け入れられているのですね。最後に、ローカルフードサイクリング株式会社様としての今後の目標をお聞かせください。

たいら:ローカルフード「サイクリング」という名前には、「循環」を大事にしたい、という想いが込められています。NPO法人での活動当時から、グリーンインフラ(自然の持つ多様な機能を活用して社会課題の解決を目指す仕組み)を作りその中で働く若い世代を増やしたいと思い活動に取り組んできました。また、事業における指標も経済的なものだけでなく、LFCコンポストで取り組んでいるような栄養循環も評価軸とする考えが世の中により浸透することを目指して、引き続き活動していきます。

石原:この度は貴重なお話をありがとうございました。

 

 

【取材を終えて】

自分で簡単に生ごみから堆肥が作れるLFCコンポスト。お家のインテリアに馴染むおしゃれなデザインも魅力的です。生ごみが減ることで、自分のライフスタイルに良い変化があるのと同時に、環境問題解決への一歩にもなる。そんな素敵な循環がLFCコンポストの体験を通じて生まれているのだなと感じました。

【インタビュアープロフィール】

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 APSPインターン 石原夢

高校の授業でフェアトレードを知ったことをきっかけに、消費を通じた社会的課題の解決に関心を持つ。慶應大学卒業後、小売業界での勤務を経て、同大学大学院に進学。APSPにて生活者の社会的意識・行動などを明らかにするための調査や企業インタビューを行いながら、ソーシャルプロダクツ購入を促進する要因をテーマに研究へ取り組む。

この企業について

ローカルフードサイクリング株式会社

福岡県福岡市東区多の津4-14-1

https://lfc-compost.jp/

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