ソーシャルプロダクツ・インタビュー<br>―mizuiro株式会社―

2020/12/28

ソーシャルプロダクツ・インタビュー
―mizuiro株式会社―

「新しい価値観の創造と、親子で楽しめる時間をデザインする」をモットーに掲げるmizuiro株式会社(青森県青森市)。同社が生み出した、お米とお野菜からできたクレヨン「おやさいクレヨン」は発売当初から反響を呼び、全国で広く販売されています。本物の野菜粉末を使っているので少しザラザラとした描き心地で自然そのものの色合いが楽しめ、色名も「きゃべつ色」、「とうもろこし色」など野菜の名前が付けられていています。また、自然素材でできているので、万が一子供が口に入れてしまっても安心。さらに、製造には廃棄されてしまう野菜や米ぬかから抽出される米油を利用しているので環境にも優しい商品です。この大人気クレヨンの開発経緯や想いについて、同社の代表取締役、木村尚子様にお話を伺いました。

―「おやさいクレヨン」発案のきっかけを教えてください。

元々フリーランスでデザイナーをしていて、何か自分のプロダクトを作ってみたいなと常々思っていました。たまたま地元の青森で開催されていた藍染展を見に行った時に、そこで藍染の自然由来の青色に非常に感銘を受け、自分も自然の色で表現できる何かを作りたいなと考えたのが始まりです。プロダクトとしては、初めはインクを考えていました。例えば欧米では青いインクで手紙を書く風習があり、そういったエピソードからも着想を得ていましたが、そこからだんだんと派生して野菜の色へ行き着きました。

その翌年2013年に県の補助金事業に応募したところ採択され、資金援助を得られることになり開発が本格化していきました。補助金の対象期間は9ヶ月と限られていたので、この短期間ではインクの開発は難易度が高いため、ほかのプロダクトを考える必要がありました。私と開発スタッフ2人の合計3人で考えていたのですが、3人とも子供がいたため、親子で一緒に使える描画材が良いとなり、子供が初めて使える画材としてクレヨンにたどり着きました。

―とても斬新なアイデアですが、商品化まではどんな道のりでしたか?

デザインは経験がありましたが商品開発は初めてだったので、まずどこから何に手をつけてよいのか初めは苦労しましたね。自分たちで何度も試作を重ねて試行錯誤の連続でした。

野菜については、まずは野菜のパウダー加工技術を持っている業者さんを探しました。業者さんには食品加工の問合せはよく来るそうですが、文房具への加工は初めてということで驚かれました。ですが、面白そうだねと興味を持ってくださり、ご協力いただけることになりました。

そしてクレヨンメーカーさんや工場の方にもご協力を仰ぎ、野菜パウダーを使うならクレヨンの主成分である油分も自然素材を使ったらどうかとご意見を頂きました。ひまわり油やオリーブ油など色々試した結果、米ぬかから排出される米油(ライスワックス)が一番ぴったりでした。野菜パウダーとの相性が良く、クレヨンとして十分な描き心地を実現できたのです。米油は今でこそスーパーなどでも売っていますが、当時はまだあまり出回っていなかったので、商品としての珍しさを出すこともできました。

野菜は、食べられるのに規格外で廃棄されるものや出荷時にカットされる部分をできるだけ利用しています。業者さんと開発を進める中で、そういった“無駄ではないのに捨ててしまう”ことを勿体なく感じ、クレヨンで上手く利用できれば廃棄物を減らせるので自然環境にも良い商品が作れると考えました。色を補うために食用色素も配合し精度を高めることにしました。米ぬかの多くは捨てられてしまう部分なので、そこから抽出される米油を少しでも活用して環境に優しい商品にしたいという想いもありました。また、「野菜」と「お米」はどちらも日本文化にお馴染みのものなので、受け入れられやすいかなというのもありました。

-完成した「おやさいクレヨン」、反応はどうでしたか?

商品発売を目前に控えた、2014年2月にギフトショー(バイヤー向けの商談会。東京ビッグサイトにて毎年開催。)に初めて出展し製品をお披露目しました。3日間開催で、私たちのブースはアクティブクリエイターズという新規出展枠だったので1日100名ほどお越しいただければ良いかなと予想していました。ところが、初日にテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」で放送していただき、2日目にはNHK「おはよう日本」の取材を受けることに。初日からブースにはバイヤーさんが溢れるほど来て下さり、翌日からはテレビの影響もあり「何であの小さなブースにあんなに人が!?」というほど更にたくさんの方にお越しいただきました。やはり「野菜からできたクレヨン」というのが目新しかったのと、本来捨てられてしまう素材を活かしたエコ商品である、というところに皆さん興味を持って来て下さいました。用意していた資料、パンフレット、サンプルが全てなくなる事態となり、全くの予想外で驚きましたが嬉しい悲鳴でしたね。

―今は海外でも販売されているのですよね?

発売開始から約1年後の2015年、ドイツの国際見本市「アンビエンテ」に出展し、韓国企業と契約が成立し、海外販売の第一歩となりました。元々海外でもチャレンジしてみたいと思っていましたし、やはり以前から日本製品全般が高品質で海外で高く評価されていたのも契約成立の後押しになったかと思います。今は韓国から広がりアジア圏を中心に、中国、台湾、香港、シンガポール、タイなどで販売されています。やはり野菜とお米は海外から見るととても日本らしさが感じられるようで反応も良く、少しずつ市場を開拓しているところです。廃棄部分を使ったエコ製品というのも、あるものをうまく利用して暮らしていく日本の文化に通じるところがあり反響を呼んでいます。ただ、現状は1~2年の短期スパンでの販売がメインなので、今後は5~10年の長期スパンで継続的に販売できるようにするのが目標です。

―商品の開発・販売だけではなく、おやさいクレヨン画展などのイベントも行っていらっしゃいますね。

2016年・2017年に「100人のおやさいクレヨン画展」を青森県立美術館にて開催しました。国内外問わず様々なジャンルの100作家による、「おやさいクレヨン」を画材としたクレヨン画展をメインに、様々な参加型コンテンツを組み合わせた企画展です。おやさいクレヨンの魅力を伝えると同時に、アートに目で見て手で触れることで、大人も子供も創造する楽しさを感じていただきたいという想いから実現しました。2年とも数日間の短い開催にも拘らず、1,200人以上もの方にご来場いただけました。また、「100人のおやさいクレヨン画project」として、同展覧会への出典作品のレプリカ販売も行っており、売上金の一部はあしなが育英会に寄付させていただいています。「おやさいクレヨン」から発展し私達にできることで社会貢献をしていきたいとの考えから始めました。

その他の取組みとして、青森県内の幼稚園や保育園に「おやさいクレヨン」の寄贈をさせていただきました。身近な地元の子供たちに是非使ってもらいたいという想いで、1園あたり2箱と少量ではありますが、地元青森県のお子様に使って貰えることになって大変嬉しく感じています。地元のクレヨン=「おやさいクレヨン」と認識してもらい、長く愛用いただけるといいなと思っています。

私達はものを売るだけのメーカーではなく、その先のモノ・コトも提案できる会社でありたいと考えています。おやさいクレヨンを使って楽しむ時間、アートを通じた地元青森の活性化、持続可能な社会を目指すためのプロダクトを開発し社会貢献活動もこれからも何かしら続けていこうと考えています。

―ありがとうございました。

mizuiro株式会社 http://mizuiroinc.com/

おやさいクレヨン http://mizuiroinc.com/products/01_vegetable_crayon

 

(当記事は2018年7月に発行された当協会ニュースレターにて紹介したものを、2020年9月現在の情報に改めた記事となっております。)

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