斬新でかわいいデザインのパッケージ、おいしさ、そして売り上げの一部を札幌円山動物園に寄付するソーシャル性が見事に調和し、累計1200万食販売という売り上げを記録した白クマラーメン。勢いは止まらず、上野動物園パンダラーメンなどの新商品も好調で、全国に販売網を拡大させています。そんな白クマラーメンの発売元、ノースユナイテッドの高橋廣行社長にお話を伺いました。
―はじめに、白クマラーメン誕生のきっかけを教えてください。
2009年、私どもの会社でテレビショッピングの企画制作をしていたのですが、そのときに寄付つき商品を扱いました。このとき、私は初めてコーズブランドというものを知り、世の中に社会貢献という「ニーズ」があると知ったのです。それ以来、いつか自分でも寄付つき商品を作りたいと考えるようになりました。その後、2009年に、以前からご縁のあった北海道の藤原製麺と一緒に商品開発することになり、札幌円山動物園への寄付つき商品として、白クマラーメンが誕生しました。
―寄付先に札幌円山動物園を選んだ理由はなんですか？
北海道といえば旭山動物園が有名になりましたが、札幌円山動物園は財政難に陥っていました。北海道出身の私は、自分自身が子供の頃、親に札幌円山動物園に連れて行ってもらいましたし、大人になってからは、自分の子どもを連れて行きました。そんな思い出深い動物園が財政難だと知り、何とか力になりたいと思っていたのです。そのような理由で、白クマラーメンの開発初期段階から、寄付先は札幌円山動物園に決まっていました。
―パッケージデザインについて、教えてください。
ご覧になってわかるかと思いますが、パッケージにはおいしさについて一切触れていません。現在は、ありとあらゆる商品が既に存在している「モノ余り」の時代です。一般的に、パッケージは商品の魅力を伝えるスペースとされますが、おいしいラーメンというのは他にいくらでもあるわけです。それなら、パッケージでおいしさの訴求は敢えて行わず、子供たちが「喜ぶもの」にしようと思いました。当初は動物園の土産物として販売するつもりだったので、とにかく「子供が喜ぶ」を第一に考えました。
―白クマラーメンはメディアにもたびたび取り上げられ、大きなヒットを飛ばしましたが、ここまでの販売数はご自身で予想されていましたか？また、ヒットの要因について、どのようにお考えですか？
前述したように、このラーメンは主に動物園のお土産として販売しようとしていたので、このように全国的にヒットするとは予想していませんでした。
ヒットの要因としては、まず、パッケージデザイン、おいしさがあげられると思います。藤原製麺さんというおいしいラーメンをつくる製麺所と組んで、「かわいいだけじゃない」ラーメンを目指して、味にも徹底してこだわったのですが、お客様の間では「かわいいからという理由で買ったのに、味も本格的だった」という意外性が話題になりました。
そのほか、「動物園」「ホッキョクグマ」というわかりやすさもよかったと思います。北海道の人にとっては、札幌円山動物園という地元への寄付はイメージがしやすいですし、それ以外の地域の方にも、「札幌円山動物園」、「ホッキョクグマ」と、寄付先が明確であることは大きかったのではないでしょうか。
―近年は寄付つき商品が増えてきています。高橋社長にとって寄付つき商品とはどのようものでしょうか？
寄付つき商品は、「商品を通じて、お客様に社会とのつながりを感じていただけるもの」だと思っています。多くの人が、社会貢献したいという気持ちを持っています。ただ行動に移せないだけなのです。たとえばどこかへ寄付をしたいと思っても、寄付先を選び、銀行で振り込みをして…というのは非常にハードルが高い。寄付つき商品はそうしたハードルを下げるものだと思います。企業にとっても、まとまったお金をどこかに寄付をするのは、なかなか継続が難しい。売り上げの一定の割合を寄付するのであれば、一度しくみを作ってしまえば細く長く続けられます。
― 最後に、今後の展望について、教えてください。
白クマラーメンだけの影響というわけではありませんが、白クマラーメン発売後、札幌円山動物園の来場者は平成25年に959431人を記録しました。95万人を超えるのは平成3年以来22年ぶりのことです。このような動きが全国に波及していけばと思います。現在、多摩動物園など、他の地域の動物園のラーメンを発売していますが、シリーズ化して、各地で相乗効果が生まれてほしいですね。
