大丸東京店での「ソーシャルプロダクツ・アワード2020」展示販売会を終えて

2020/03/26

大丸東京店での「ソーシャルプロダクツ・アワード2020」展示販売会を終えて

一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会 事務局長 深井賢一

 

「物語」を売る大丸東京店でのPOP-UPストア

第7回となる「ソーシャルプロダクツ・アワード2020」受賞商品を中心とした展示販売会が、3月11日(水)~16日(月)大丸東京店で開催されました。新型コロナウィルスの影響で、表彰イベントは中止にしましたが、展示販売会を無事開催できたのは、大丸松坂屋百貨店様のご協力があったからです。
大丸東京店でのソーシャルプロダクツPOP-UPストアは、今回で3回目となります。それは大丸東京店のあるマネジャーの「私たちがお客様へ売場で提供するモノの価値を考え直したい」という強い問題意識から始まりました。その問題意識に共感した私たちは、単に有名だからとか、品質が良いからとか、あの店で売っているからとか、そんな表層的なことではなく、「誰が」「どんな思いで」「どうやって」作ってこの売場に来たのか、そうしたモノの背景や物語が伝わるような商品で構成された売場を作り、「モノ」ではなく「物語」を買ってもらいたい、そんな思いでアワードの展示販売会を企画しました。

背景と物語の先にモノがある

今回の展示販売会は、本年度のソーシャルプロダクツ・アワード2020を受賞した商品を中心にした企画です。まずは大賞・優秀賞・生活者審査員賞など、日本を代表する6商品をどう見せるか。それは単に受賞商品を展示するだけでなく、新しい売り方を提案するものでなければならないと思いました。

・モノよりも物語
・スペックよりも背景
・会話型の情報提供

これは、主要6商品をどのようにお客様にお見せするかを検討した時のキーワードです。

受賞したのはソーシャルプロダクツなので、モノです。しかし受賞商品は、プロダクツとしての品質に、社会性や環境への配慮が大きな付加価値となっており、それらが物語としてわかりやすくまとめられている優秀なモノたちです。
だから、モノの良し悪しをアピールすることよりも、それが誕生する物語や背景を前に出したいと思いました。つまり商品の訴求コピーというより読み物になるように、高さ2.7m・幅40㎝の縦長の大きな紙に背景と物語を書き、大丸東京店の天井から吊るしました。背景と物語がまず目に飛び込んできて、その先にモノがある、というような構成と商品配置にしたのです。このクリエイティブは、株式会社YRK andのクリエイティブチームの協力を得ました。
ただしそれだけだと、長い文章が天井からぶら下がっているだけで、よほど関心のあるお客様以外は、読む気がしないのではと考え、「会話型のコピー」をお客様の目線に近い位置に配置しました。

年度テーマ(プラスチックごみ問題)・大賞のニチバン「セロテープ®」であれば

『え!そうなの?審査員も驚いた セロテープ®の真実』

自由テーマ・大賞のサラヤ「手指消毒スプレー・ハンドジェル」は

『東アフリカ・ウガンダの人が言う「サラヤする」って何?』

というように、会話の前提となる「問いかけ」や「呼びかけ」だけのコピーにしました。会話では普通に使う「こんな商品あるんだけど、おもしろいよ」という呼びかけです。コピーを読んでもどんな商品なのか想像がつかないようにし、「うん?なに?」と疑問符がついて引き込まれてほしいと思い制作しました。
この効果があってか、実際に売場に立っていると、「本当にウガンダで『サラヤする』って言われているんですか?」とか、「セロテープは、これを読んで私も驚きました」と、お客様の方から話しかけてくださることがありました。




お客様の関係は「売る側と買う側」ではなく「仲間」「同志」

コロナウィルス問題で、一部の商品の品切れが続いていたりしていますが、日常生活の中では不自由なくモノが売場にも家庭にもあふれています。通りがかりに商品に興味を持ってもらおうとその商品のアピールを一方的に述べたところで、足を止めてもらうのは難しいものです。ましてや背景や物語までじっくり読んでもらえるはずがないのです。
問いかけたり、呼びかけたりすることで、その先を知りたいと関心を持ってもらう。そのうえで読んでもらえば、背景や物語に対して理解と共感を持ってもらえるかもしれない。そうして足を止めてくださったお客様に、売場の私たちがその商品の裏話や、開発した人の思いや苦労を口頭でお伝えする、というコミュニケーションを心掛けました。

そうすると、売る側と買う側という一方的な関係ではなく、一つのモノを前にして、社会や環境問題であったり、作る工程の苦労であったり、そもそもなぜこの商品をつくろうと思ったのかなど、自然な会話ができる対等な「仲間」「同志」の関係になるのです。そうなってはじめて背景や物語が伝わり、共感や感動を共有し、「一つ買わせてもらいますね」と言ってくださいます。この売場に来るまで「ニーズもウォンツ」もなかったけど、商品の背景と物語を知って「意味と価値」を感じて買いたくなった、という変容が起こるのです。
私は、この「会話」の部分をSNSに置き換えることができると考えています。

 

貴重なヒントを発見できる大丸東京店に感謝

大丸東京店での6日間、たくさんのお客様がお越しくださいました。
受賞商品の会社・団体の方、開発に関わった会社の方、そのライバル会社のみなさん、SDGsに関心があって見に来られたビジネスパーソン。たまたま大丸に来店されたお客様、受賞商品のファンのお客様など、多くのお客様が興味を持ってくださり、お買い上げくださいました。とてもうれしいことですし、感謝しております。
同時に、その時のお客様との会話の内容は、貴重な情報です。分析して次に活かしたいと計画しています。

 

新型コロナウィルスも、新たな社会問題だと位置づけられます。コロナ問題によって消費が低迷する中で、新たなコストも発生しています。
コロナ後もモノやサービスは、今までと同じ原理原則では売れなくなるでしょう。今回の大丸東京店での展示販売会は、その解決への大きなヒントを得ることができました。こうした機会をくださった大丸松坂屋百貨店様には心から感謝申し上げます。

そして4月15日から、また大丸東京店でソーシャルプロダクツのPOP-UPストア*を開催します。また新しいソーシャルプロダクツとの出会いにご期待ください。

 

*4月に予定していたPOPUPは、新型コロナウィルス感染症への配慮のため、中止いたしました。3/31追記

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