ソーシャルプロダクツ・インタビュー<br>―株式会社タクト―

2017/02/24

ソーシャルプロダクツ・インタビュー
―株式会社タクト―

株式会社タクト(東京都新宿区)は2008年創業、Web制作を主な業務とする従業員数13名のIT企業です。デザイナー、プランナー、エンジニアら少数精鋭の専門家集団によりこうした事業を手掛ける“ITベンチャー”は多数ありますが、タクトの大きな特徴は、ソーシャルグッドをテーマとするWebメディア「buycott(バイコット)」を自らが運営していることです。牽引役として編集長も務める同社代表取締役社長の和田要平さんにお話を伺いました。

―はじめに、バイコットとはどのようなメディアなのでしょうか。

バイコットは、ボイコット(不買・拒否)の対義語で、買う(buy)ことで応援する、という意味合いを込めた新しい言葉です。私たちのまわりには、寄付付き・フェアトレード・エコ・エシカルなど、買うことで社会を少し良くする、ソーシャルグッドな商品やサービスがたくさんありますが、そのことがあまり知られていません。なぜなら、多くの企業が、その取り組みを積極的には周知・発信していないから。理由はさまざまですが、良いおこないを自ら伝えることを善しとしない「陰徳」などの日本特有の感覚が一因と言えます。

バイコットでは、企業の代弁者として、また生活者の代表として、注目されることの少ないソーシャルグッドな商品やサービス情報を集めて、体験レビュー形式やインタビュー形式など、様々な切り口で紹介しています。そのテイストも社会貢献ありきの堅苦しいものではなく、あくまで「ラーメンおいしい」や「これカワイイ」等が入り口になります。

また、スーパーやコンビニ、飲食店などで、手軽に購入できる商品を多く紹介していますので、これまでの社会貢献のイメージからすると、だいぶカジュアルです。まずは、ふつうの生活者に関心を持ってもらい、そして一過性ではなく無理なくゆるやかに続けて欲しいですね。

2016年8月にサイトを大幅リニューアルし、よりエンターテイメント要素を強めて記事本数も増やし、メディアの認知度アップを図っています。

―バイコットの内容はよく理解できました。ではなぜ、Web制作会社として、ソーシャルグッドなWebメディアを立ち上げるに至ったのでしょうか。

ひとつは、怠け者の私自身が、ボランティアや寄付よりも身近で、無理なく続けられる社会貢献のかたちを探していたこと。ふたつめは、CSRを学ぶなかで出会った「コーズ・リレーテッド・マーケティング」に強い関心を持ったことです。直訳すると社会課題と紐づいたマーケティング。これはバイコットそのものです。閉塞感を感じていたCSRと生活者の関係性が根底から変わる!日本に陰徳の壁があるなら、自分が代弁者になって、おもしろおかしく広めてやると!と。いま思うと、いろいろな勘違いも青臭さもあったのですが、そこが原点であり、根底にある想いは変わりません。

 

―利用者層、注目を集めている商品の例を教えてください。

メディアユーザーの年齢層は30代がメインで男女比は1対2くらい。買い物の決定権を握る主婦の方や、比較的自由にお金が使える働く女性が多く訪れています。売上に応じて国連WFPの『学校給食プログラム』に寄付する「チキンラーメン」や、釜揚げうどん1杯につき1円をミャンマーの学校建設に寄付する「丸亀製麵」など、誰もが一度は口にしたことがある商品は、記事の反応もいいですね。「あの商品で社会貢献ができるんだ」というちょっとした驚きがあるようです。一方で、犬猫の殺処分ゼロの取り組みなど、共感性の高い課題に注目が集まるのも、バイコットならではの特徴だと思います。

―リニューアル後の各記事は、取材に基づく独自写真が多くなり、さらに読みやすく、読みごたえもアップしましたね。そしてもうひとつ、御社では “10 sites for 1 site ”という取り組みもされていますね。

はい。企業などのWebサイトを10件制作するごとに1件、NPOなどの取り組みを紹介する「60秒で共感ページ」を無償で提供しています。はじめは寄付なども考えたのですが、小さな企業ができる寄付には限りがあります。ならば、得意領域で貢献しようと。それもただWebサイトを作るのではなく、弊社の強みである「企業の価値を最大化して顧客に届ける」技術ごと、NPOに提供しようということになりました。

実際に多くのNPOにとって、支援者集めの要となる「自身の活動を外に発信する力」が大きな課題となっています。そこに私たちのノウハウを凝縮した「60秒で共感ページ」はとても相性が良く、ご提供先様にはたいへん喜んでもらっています。作ったページは団体のホームページ内で活用してもらうほかに、バイコットのサイト内からの誘導バナーも置きますので、ご提供先様には社会意識のあるバイコットユーザーが流入し、あらたな支援者の獲得につながる効果もあるようです。

―自社メディアである「バイコット」を運営し、さらに“10 sites for 1 site ” として無償でWebページを制作。大企業ならいざ知らず、本業のほうも多忙をきわめる御社が非営利部門を維持していくことは容易ではないのではと感じます。実際にはいかがですか?

バイコットを運営することで、通常のWeb制作では得られない経験、出会いが数多くありました。実際に記事掲載がご縁になってお仕事に繋がることはありますし、読者の方がお勤め先から声を掛けてくださることもあります。本業でも「社会的な良いイメージをもたらすホームページ」が企画できるユニークなWeb制作会社として、事業の差別化が図れるようになってきました。

採用面でもバイコットを志望動機に挙げる方が増え、確実にプラスに働いていますし、在籍するスタッフにも好意的に受け止められています。モチベーションアップや離職率の低下にも影響していると思います。自社のブランディングという点において、かなりメリットが大きいと感じていますね。

なお、現時点で、直接的な広告収入による営利化は考えていませんが、私たち自身がサステナブルに取り組みをおこなっていくためにも、収益を上げる必要性は感じています。Webメディアは終着点ではなく、あくまで私たちの原点です。2年半の運営経験で得た、コーズマーケティング、コーズブランディングの知見、NPOや企業との弾力的なネットワークを活かして、企業の商品開発や、PRのお手伝いがスタートしています。

 

―今後の展開について教えてください。

バイコットの運営を通じて強く感じることは、結局は生活者の意識が変わらない限り、根本的な状況は何も変わらないという真理です。企業がいかに素晴らしい取り組みをしようとも、それが中長期で企業に還元されない、そもそも取り組みすら認知されていない、という状況では、いかに社会貢献の視点でスタートした施策であったとしても、長く続けることは経営的に困難です。大規模なインパクトを生んできたプロジェクトが、ひっそりと幕を閉じる場面を何度も目の当たりにしてきました。

社会貢献型の消費は世界の成長市場です。日本はそのなかでまだまだ立ち遅れていますが、学生や若者層を中心に確実に関心が高まっています。

まずは、私たちが生活者としてやらなくてはならないのは、企業の良い取り組みには関心を示し、購買などの具体的なアクションで行動を示すこと。そのために、もっとも参考になるメディアとして、記事の質と量を高めること、多くの人に届ける伝播力、認知力を持つことが最重要課題と捉えています。

「ソーシャルグッドを実践する」ことが、多くの人にとってもっと楽しく、もっと身近なものになっていくよう、これからもバイコットによる挑戦を続けていきたいと思います。

株式会社タクト コーポレートサイト http://tactweb.co.jp/

バイコット http://buycott.me/

この企業について

株式会社タクト

新宿区新宿5-6-1新宿やわらぎビル7F

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