【ソーシャルプロダクツ・インタビュー】<br>食品ロス削減を身近なものに。三方よしの食品ロス削減マッチングサービス ―株式会社G-Place「タベスケ」―

2022/06/30

【ソーシャルプロダクツ・インタビュー】
食品ロス削減を身近なものに。三方よしの食品ロス削減マッチングサービス ―株式会社G-Place「タベスケ」―

生活者、食品関連事業者、自治体の三方よしを叶える「タベスケ」。食品ロス削減の意識が高まり、まだ食べられる食材を廃棄するのがもったいない、という声から生まれたサービスです。今回お話を伺ったのは、タベスケを運営する株式会社G-Placeの古川輝雄様と中島啓介様。現在多くの食品ロス削減サービスがある中でも、タベスケは利用者から厚い支持を得ています。多くの人に喜ばれるサービスを生むヒントを教えていただきました。

「タベスケ」はソーシャルプロダクツ・アワード2022にて優秀賞を受賞しました。

(インタビュアー:APSPインターン 磯田)

 

自治体との繋がりから生まれたサービス

――はじめに、御社の事業内容について教えてください。

 弊社の公共イノベーション事業グループでは、自治体向けのソリューションサービスを提供しており、自治体様との協業を通じて環境問題の解決に長年取り組んでいます。自治体様へのごみ袋販売から始まり、システム開発やごみ分別アプリ「ごみスケ」の開発等を行ってきました。さらにお客様からの要望へ応えるために、現在では子育て世代や高齢者向けの情報発信やアプリ開発も手掛け、多分野におけるソリューションサービスを展開しています。

――御社は自治体とのつながりが強いのですね。次に、タベスケの開発経緯について教えてください。

 ちょうど会社の新規サービスを考えている時でした。自治体の公式アプリを導入いただいている兵庫県姫路市の自治体ご担当者様から、食品ロスに課題意識を持たれていること、SDGsの実現が重要視される中で、周知だけではなく食品ロス削減に向けた具体的な仕組みがほしいという声をいただきました。そんな姫路市さんのニーズから、タベスケの開発が始まりました。

――自治体からの声がきっかけだったのですね。開発でこだわった点はございますか。

 利用者のニーズに合わせてサービス開始後も柔軟に機能を搭載していきたいと思ったため、弊社がこれまで開発してきたアプリ形式ではなく、タベスケはウェブサービスとして展開しています。サービス開始のプレスリリースを出した際には、予想以上に自治体からお問い合わせがありました

――やはり食品ロス削減に関心のある自治体さんは多いのですね。

 はい。SDGsの実現に向け、自治体が先導となり消費者や事業者に働きかけることが期待されているという背景もあるかと思います。そのような中で、2021年3月よりタベスケのサービス提供を開始しました。

――「タベスケ」という名前の由来は何ですか。

 「たべるをたすける」という意味が込められています。そのほか弊社が提供しているサービスの名前も、「ごみスケ」や「ごみサク」など、人の名前のようなものが多いんですよ。

――そのサービスに愛着のわく、かわいらしい名前ですね!

 

「三方よし」の実現で食品ロス削減を身近に

――タベスケは、生活者(ユーザー)・食品関連事業者(協力店)・自治体それぞれにどのようなメリットがあるのでしょうか。

 タベスケは、サービス内の商品売買以外に、ユーザー様と協力店様に対する費用は発生しません

 ユーザー様にとっての1番のメリットは、食品ロスになってしまうはずだった食品を安く購入できることです。また、タベスケに掲載されている情報から、その地域にある飲食店を改めて知るきっかけにもなっているようです。タベスケに掲載された商品情報の通知は、メールで受け取れるようになっています。ユーザー様からは、「今までは購入したい規格外品があっても、店舗に行ってみないと在庫があるか分からなかったが、このシステムは在庫の確認と予約ができ、非常にいい。」「受け取り時間内であれば自分の都合の時間で受け取りに行けるのがいい。」といったお声をいただいています。

 ユーザーメリット

 協力店様にとっては、食品ロスを削減することで、食品廃棄物処理のコスト削減にもつながっています。また、これまでは食品ロスとなっていた商品が、タベスケを通じてユーザーへ提供できるようになったことで、新たな利益を生みだせるようになりました。タベスケをきっかけにご来店され、集客につながっているという声も聞いています。

協力店メリット

 自治体様にとっては、食品ロス削減につながる活動へ住民が気軽に参加する機会を作ることができるとともに、地域の廃棄物処理費用の削減が実現できるというメリットがあります。タベスケの大きな特徴の1つは、自治体専用画面から食品ロス削減量の集計結果を把握できることです。どれだけの人が協力店から商品を買って、食品ロスが減ったかがわかるようになっています。これらが可視化されているのは、他のサービスにはない、タベスケ独自の仕組みです。

――自治体は、どのようなステップでタベスケを導入できますか。

 タベスケについて自治体様から弊社へお問い合わせをいただいてから、2~3か月で導入をいただいています。導入までは以下のような流れとなっています。(詳細:導入の流れ

・自治体様より弊社のお問い合わせフォームに必要事項をご入力いただく

・資料のご送付、又は弊社営業がお伺いし、本サービスについてご説明

・ご契約

・タベスケへのログイン・初期設定

・運用開始(協力店のステータス変更や情報の追加など)

 導入時のデータ準備などは必要なく、ご契約後にお渡しする専用のURLからログインしていただくのみとなります。また、運用開始後の自治体様の実作業は「協力店の申請審査」「お知らせ記事の追加」がメインとなり、運用にかかる複雑な業務が発生しない点もご好評いただいています。自治体様がタベスケを導入後、協力店様の募集や住民の皆様への広報活動をする際には、弊社も他自治体様での経験をもとにサポートさせていただいています。

――自治体ごとにタベスケのサービス名を変えているのはなぜですか。

 アプリですとそのアイコンを自治体様ごとに作成したりすることが可能なのですが、タベスケは統一されたシステムのため、サービス名を変えることで自治体様ごとの特色が出るようにしています

サービス提供エリア

兵庫県姫路市のサービス名

 

タベスケを通じて地域の「食べるを助けたい」

――タベスケのサービス開始後、ユーザーからの反響はいかがでしたか。

 ユーザー様からは、気軽に地域のお店の食品ロス削減に貢献できる点を、ご好評いただいています。タベスケでは、ご購入によってどのくらいの量の食品ロス削減に貢献ができたのかを、ユーザー様に見ていただける設計をしています。削減量の見える化によって、貢献を実感いただきやすくなっているのかと思います。ユーザー様が自発的にSNSで発信くださったり、地域内の口コミでタベスケをおすすめくださったりしています。

 また、タベスケが導入されていない自治体に住まわれている方から、「タベスケの取り組みに共感しました。今後私の住む地域にも導入されることを見込んで、前もってユーザー登録しておきます。」とメッセージをいただいたことがあり、とても印象に残っています。

ユーザー画面で食品ロス削減量が分かる

――協力店からはどんなお声がありましたか。

 コロナ禍によって、食品ロスに直面する協力店様もいらっしゃいました。姫路市で冷凍食品を扱う協力店様は、コロナ禍の休校で学校給食がなくなり、大量に食品が余ってしまう事態に陥りました。タベスケを通じて情報発信をしたことで、ユーザー様のへの販売経路ができ、食品ロスを防ぐことができたそうです。また佐世保市では、道の駅のイベントが無くなり軍艦カレーの在庫が1500食発生してしまったそうですが、タベスケを通じて完売しました。

 協力店様がタベスケに参加される前のご心配として、「食品ロスになりうる商品を安い価格で販売した場合、その価格の時にだけ購入されるようになってしまうのではないか」といったお声があります。実際にタベスケのサービスを開始してみると、タベスケをきっかけに初めてお店に行き、そのお店の常連になるユーザー様もいらっしゃいます。また、価格が安くなっている商品だけでなく、ご来店時にそれ以外の定価商品も目に入り、一緒に購入される方もいらっしゃるそうです。廃棄される予定だった商品をよりお得な価格で販売することでユーザー様に喜んでもらったり、来客数の向上につながるといった、タベスケのサービスを利用することによる新たな価値をつくっていきたいと思っています。

 また協力店様からは、「タベスケは自治体が運用主体となるサービスなので信用力もあり、登録料・使用料・決済手数料がすべて無料で事業者への負担が無いため登録した」というお声もいただいています。

――タベスケを導入した自治体では、どのくらいの食品ロスが削減できたのでしょうか。

 導入の1例目となった姫路市の最新情報としては、約8.3 tの食品ロス削減量※となっています。※本サービスで購入された食品の重量を食品ロス削減量としています。

兵庫県姫路市 タベスケ導入による成果(2022年6月時点)

 また食品ロス削減量につきましては、三重県桑名市、長崎県佐世保市が姫路市に次いでいます。タベスケにご登録いただいている全国のユーザー数は、18,241人となりました(2022年6月時点)。

――ユーザー・協力店・自治体それぞれがポジティブに地域の食品ロス削減に取り組めるのは素晴らしいですね。タベスケの今後の展望を教えてください。

 タベスケは、使いやすくシンプルなサービスを心掛けたので、幅広い世代のユーザー様に現在ご利用いただいています。食品ロスは私たちの生活に深く関連する問題だからこそ、より多く自治体様・ユーザー様・協力店様にタベスケのサービスを届けていきたいです。そのためにもサービスをお使いいただいている方々の声を聞き、サービスへ反映させ、進化を続けていくことが重要だと考えています。

 

 

【取材を終えて】

本来であれば食べられる食品の廃棄を防ぎ、飲食店の応援にもつながるタベスケのサービス。食品をお得に購入できることに加え、社会課題解決への貢献を実感できる仕組みが素晴らしいと思いました。今後ますます多くの方がタベスケのサービスを利用し、食品ロス削減のムーブメントが広がっていくことを期待しています。

【インタビュアープロフィール】

東京女子大学 国際社会学科 APSPインターン 磯田菜月

フードロスやジェンダーなどの社会問題に関心を持ち、ソーシャルプロダクツの発信に取り組みたいと思い、APSPのインターンシップに参加。大学では、学生のSDGs貢献意欲向上に向けたプロジェクトのリーダーとして活躍。APSPではソーシャルプロダクツアワードに関する活動や、インタビュー記事執筆に取り組む。

この企業について

株式会社G-Place

大阪府大阪市淀川区宮原四丁目1番14号住友生命新大阪北ビル13階

https://g-place.co.jp/

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